サマリー
Q1 地条鋼とは何ですか?
A1 地条鋼とは、鉄スクラップなどを中周波誘導電気炉と呼ばれる電炉で溶かして製造した、成分や品質の安定しない、粗悪な鉄鋼・鋼材のことです。当初は地面に埋め込まれた簡易設備で製造されていたので「地」という文字が使われています。地条鋼の生産能力は2015年末時点で1億トン程度とされ、これは日本の粗鋼生産能力とほぼ同じです。
Q2 中国の鉄鋼の過剰生産能力はどの程度で、中国政府の削減計画はどうなっていますか?
A2 2015年末の粗鋼生産能力は11.3億トン(国家統計局)です。生産は8億トンですから、3億トン超が過剰生産能力です。中国政府は2016年以降の5年間で1億トン~1.5億トンを削減する計画でしたが、今年2月には3年~5年で1.4億トンの削減と、計画を修正しました。前倒しを視野に入れ、レンジの最大値に近い削減目標が提示されたことになります。
Q3 地条鋼もその対象に含まれていますね?
A3 いいえ。地条鋼はそもそも違法で存在しないはずですから、生産統計にも削減計画にも含まれません。中国政府は、2016年に4,500万トンの生産能力を削減する計画を発表しましたが、地方政府と国有企業の削減計画の合計は9,000万トンに達していました。しかし、そのかなりの部分が地条鋼であり、当然、これを削減計画に含めることは許されませんでした。
Q4 違法な地条鋼の生産設備は閉鎖されないのですか?
A4 中国政府は閉鎖に真剣に取り組み、2017年6月末までに地条鋼を生産する工場・設備を全て閉鎖し、それを確認するための視察団を中央から送り込むとしています。
Q5 そうなると相当な規模の生産能力が削減されることになりますね?
A5 2016年の削減実績は6,500万トンとなり、2017年は5,000万トンを削減する計画です。これは地条鋼を除くベースです。さらに、2017年6月末までに1億トン分の地条鋼の設備が閉鎖されれば、実質的には2年間で2億トン以上が削減されることになります。地条鋼は生産統計には含まれませんが、市場には出回っていますので、供給のタイト感が高まりました。
Q6 今後の過剰生産能力の削減について。
A6 中国鉄鋼工業協会によりますと、2016年に削減された生産能力のうち、75%は既に生産停止となっていた設備であったとのことです。2017年は身を切る削減が本格化し、従業員の解雇をはじめ削減の難しさは増していきます。既に乗用車販売に陰りが見られる中、今後は需要の半分を占める建設(住宅、インフラ)部門の減速が予想されるなど、当面の鉄鋼需要は抑制される可能性が高いとみています。ここでしっかりと過剰生産能力の削減を行わなければ、中国政府が目指す稼働率の引き上げ(2015年末の70%前後⇒2020年末に80%)は覚束なくなります。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米中貿易戦争、勝者は中国
伝家の宝刀・レアアース、輸出先の分散化、迂回輸出
2026年10月02日
-
中国政府が景気テコ入れ策を発表
再貸出限度額の増額、住宅ローンへの1%利子補給
2026年10月01日
-
中国経済見通し:不動産不況、脱却はまだ先
住宅完成後販売への移行は◎。一段と悪化する内需と堅調な外需
2026年09月24日
最新のレポート・コラム
-
一括取得型自己株式取得(ASR)入門
ASRに関する基本的な事項をQ&A形式で解説
2026年10月16日
-
「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」における金融経済教育に関する記述
金融経済教育関連に限ると、大幅な拡充は行われない方向性か
2026年10月16日
-
日本の長期金利、2035年に5%台の可能性
2035年に3.5~4.2%程度で、海外保有拡大で1%pt超の上乗せも
2026年10月16日
-
なぜ企業は同じ情報を何度も提出しなければならないのか
公的統計のデジタル化を問う①-負担軽減の「効果」
2026年10月16日
-
成長投資の先にあるもの ~AI時代に問われる「組織能力」~
2026年10月16日
よく読まれているリサーチレポート
-
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
-
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
-
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
-
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
-
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日

