サマリー
国家外国専門家局が9月27日付けで発表した通知に、外資系企業や現地で働く外国人就労者が困惑している。中国は2017年4月以降、外国人就労者をA類(外国ハイレベル人材)、B類(外国専門人材)、C類(外国一般人材)にランク付けし、C類については国による割当管理を実施する。北京市、天津市、河北省、上海市、安徽省、山東省、広東省、四川省、雲南省、寧夏回族自治区では先行して実施し、北京市は2016年12月1日付けで実施する。
A類は、(1)中国の中央・地方政府の人材計画で選定された者、(2)国際的に公認された実績に関する基準に適合する者、(3)市場動向に基づく奨励類の職位に必要な外国人材、(4)イノベーション・起業人材、(5)優秀な青年人材、(6)ポイント制(後述)で85点以上の者、のいずれかである。
B類は、(1)学士以上の学位および2年以上の関連実務経験を持ち、一定の基準を満たす者、(2)中国の大学で修士以上の学位を取得した優秀な卒業生、(3)世界ランキング100位以内の外国の大学において学位を取得した卒業生、(4)外国語の教員、(5)ポイント制で60点以上85点未満の人材、のいずれかである。
C類は、(1)行政機関の許可または授権により雇用した者、(2)中国と外国政府の間の国家間協議に基づき雇用した者、(3)政府間協議に基づいてインターンを行う外国人青年、(4)ハイレベル人材とともに中国に来る家政サービスに従事する外国人、(5)遠洋漁業などの特殊な分野に従事する外国人、(6)季節性労務に従事する外国人、(7)その他、職位の割当管理が行われる外国人、であり、中国の労働市場の需要を満たし、国の政策の規定に適合する臨時的、季節的、特別な技能を持たない、またはサービス的業務に従事する一般外国人とされる。
次頁に国家外国専門家局が発表したポイント制の一覧表を付した。企業が人材を中国に派遣する場合、B類以上が望ましく、この一覧は一定の目安となる。自分でも試算してみたが、多くの駐在員はB類にランクされることになろう。A類に分類されるのは、余程の高収入、高学歴、豊富な職務経験を有し、かつ働き盛りで、中国語も堪能なスーパー駐在員である。
政策の背景には、中国政府が「優秀」と考える人材の流入を促進する一方で、C類に分類される人材の流入を抑制することで、中国国内の一般労働者の雇用を守る目的があろう。広州市などでは不法滞在の外国人が増加し、現地の雇用や治安に悪影響を与えているとの報道がある。さらには、ポイント制では所得が多いほどポイントが加算されることから、収入を事前に申告させることで外国人就労者への課税を強化する狙いもあるのかもしれない。
しかし、全ての外国人就労者をランク分けすることの是非を含め、今回の政策は上策とはいえない。まず、世界中で高度人材の獲得競争が激化しているなか、A類には各種届出の優先対応などが実施されるというが、魅力ある優遇策ではない。一方で、若くてバイタリティー溢れる現地採用の優秀な外国人材、あるいは、各国で技術者や熟練工として働き、退職後に中国で現地雇用された優秀なシニア層が、C類に分類され、就労ビザの取得が難しくなったりするリスクがある。特に後者は、製造業における安全管理や技術向上に果たしてきた役割は小さくない。一部製造業や一般的なサービス業では、混乱が深まりかねないだけに、今後の動向には注意が必要であろう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:年後半減速も2025年は5%前後を達成へ
不動産不況、需要先食い、トランプ関税2.0の行方
2025年07月22日
-
中国:内巻(破滅的競争)と上乗せ関税の行方
追加関税大幅引き下げでも製造業PMIは50割れが続く
2025年06月24日
-
中国:関税引き下げを受け、見通しを上方修正
25年は3.9%→4.8%、26年は4.0%→4.2%に上方修正
2025年05月23日
最新のレポート・コラム
-
カーボンクレジット市場の新たな規律と不確実性
VCMI登場後の市場と、企業に求められる戦略の頑健性
2025年07月24日
-
金利上昇下における預金基盤の重要性の高まり
~預金を制するものは金融業界を制す~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
企業の賃金設定行動の整理と先行きへの示唆
~生産性に応じた賃金決定の傾向が強まる可能性~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
「外国人優遇」は本当か?データで見る国民健康保険・国民年金の実態
2025年07月25日
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日