サマリー
3月5日から16日に第12期全国人民代表大会(全人代)第4回会議が開催された。李克強首相の政府活動報告では、「国民経済・社会発展第13次5ヵ年計画要綱」の柱は、①年平均6.5%以上の成長維持、②イノベーション、③協調(調和)、④グリーン(エコ)、⑤開放、⑥共享(共に享受する)の6つであると説明された。①では、小康(衣食住が足りた上でややゆとりのある)社会の全面的完成という目標を達成し、2020年までにGDPと国民一人当たりの所得を2010年比で倍増させるには、今後5年間は年平均6.5%以上の実質成長率を維持しなければならない、とした。②~⑥は昨年10月の「中国共産党中央の国民経済・社会発展第13次5ヵ年計画に関する建議」で提示された「5つの発展理念」が踏襲されている。
中国の実質成長率は2010年の前年比10.6%を直近のピークに5年にわたり減速傾向が続き、2015年は同6.9%だった。2012年には生産年齢人口が減少に転じ、同年に第三次産業のウエイトが第二次産業を逆転し、2015年は第三次産業が50.5%、第二次産業は40.5%へと差が拡大した。需要項目別には投資、産業別には製造業が牽引役であった高度成長期は既に終わりを告げ、消費とサービス業が牽引役となる「中高速」成長が到来したというのが中国政府の認識である。
「イノベーション」が5つの発展理念の筆頭に掲げられたのには、理由がある。2006年以降の最低賃金大幅引き上げを機に拍車がかかった労働コストの急上昇や、長期にわたった持続的元高などにより、中国の労働集約的な産業・製品の価格競争力は大きく低下した。一帯一路(海と陸のシルクロード)構想には、競争力を失った同産業の海外移転を促進する側面がある。自国に残った産業をアップグレードしなければ、空洞化は避けられず、成長率が急低下するリスクが高まることになる。これが、中国がイノベーションを最重視する、切実な背景となっているのである。
「調和(協調)」で重視されている戸籍ベースでの都市化率引き上げは、賃貸・分譲住宅の実需を増やし、インフラ需要や消費需要を刺激する。「グリーン(エコ)」では、大気・水質・土壌汚染の改善が喫緊の課題であることは、人々の健康や食の安全の観点からも言を俟たない。「開放」では一帯一路構想を強力に推し進め、アジアインフラ投資銀行(AIIB)がこれを資金面でバックアップする。「共享」では改革・開放政策の恩恵を享受できていない7,000万人もの貧困層の貧困からの脱却が一大テーマとなる。
2012年11月の党大会で誕生した習近平政権にとって、第13次5ヵ年計画は初めて自前で手掛けた5ヵ年計画となる。如何にしてこれを着実に実行していくか、現政権の手腕が改めて問われよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:飲食業景気指数が過去最低に
内巻(破滅的な価格競争)の悪影響は中小型店に集中
2026年04月24日
-
中国:2026年は政府成長率目標の下限か
ただし、中東情勢緊迫長期化で下振れリスク高まる
2026年04月21日
-
中国:26年1Qは予想外の堅調で5%成長
ただし、中東情勢緊迫長期化なら政府目標4.5%~5%成長は困難に
2026年04月17日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
-
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
-
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日

