サマリー
◆10月23日夜、中国人民銀行が追加金融緩和を発表した。10月24日以降、1年物貸出基準金利は0.25%引き下げられて4.35%になり、大手行の預金準備率は0.5%引き下げられて17.5%となる。
◆同時に預金金利の上限は撤廃される。これによって銀行は自主的に金利を決定できるようになるのか?少なくとも現状では否である。中国人民銀行は、金利の自由化・市場化に向けた過渡期として、今後しばらく貸出・預金基準金利の発表を続けるとしている。貸出金利について、将来的には、上海銀行間市場の貸出基礎金利(LPR=Loan Prime Rate)などを参考に金利が自主的に決定されていく姿を描いている。ただし、その主要なプレーヤーは国有商業銀行であり、当局の「窓口指導」の絶大な影響力は温存されよう。
◆10月26日~29日に開催される五中全会では2016年~2020年の経済運営方針・目標を盛り込む第13次5ヵ年計画を討議する。成長率目標を現5ヵ年計画の7%前後から6.5%前後に引き下げることなどを議論するとみられる(計画の発表は2016年3月の全人代まで待つ必要がある)。仮に6.5%前後に設定されるとしても、これは平均であり、前半は高めで後半は低めとなるイメージであろう。2011年~2015年の第12次5ヵ年計画の成長率目標は7.0%前後であったが、単年の目標は、2011年は8.0%前後、2012年~2014年は7.5%前後、そして2015年が7.0%前後であった。2016年の目標は2015年と同様の7.0%前後に設定される可能性が高く、着地点の下限は6.8%程度となるのではないか。今後しばらくは、ソフトランディングを目指すための追加金融緩和やある程度の財政政策などの景気下支え策が若干強化されるとみている。特に、預金準備率の引き下げ余地は大きく残されている。
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