サマリー
◆上海総合株価指数は6月12日に5,166.35ポイント、年初来59.7%高(2013年末比144.2%高)の高値を付けた後、急落した。7月3日は3,686.92ポイントで引け、14営業日で高値からは28.6%の急落となった。
◆これを受けて、①CSRCは株式需給悪化を避けるべくIPOを抑制する方針を固め、7月4日には上場認可を得ていた28社がIPOを延期する旨を発表した、②中国の大手証券21社は、7月4日に(1)2015年6月末時点の純資産の15%に相当する1,200億元を拠出し、国内ブルーチップで構成される上場投資信託(ETF)に投資する、(2)上海総合株価指数が4,500ポイント以下の水準では、自己売買目的で保有する株式を売却せず、タイミングを見て買い増しを行う、(3)上場証券会社は積極的に自社株買いを行う、などの株価対策を発表した。②は当然、中国政府の意を受けたものであろう。
◆週明け7月6日の上海総合株価指数は前日比2.4%高で引けた。ブルーチップで構成される上証50指数は同6.5%高だった一方で、中小型株で構成される上証150指数は同5.3%安と明暗を分けた。「PKO(株価維持策)でブルーチップを買い支える」方針に対するマーケットの素直な反応だったのであろう。
◆今後、少なくとも株安に明確に歯止めがかかるまでPKOは維持・強化されよう。中国政府は資産価格(不動産、株式)の上昇をテコに、消費を中心に景気を下支えようとしており、株価急落が続くことは看過できないのである。そしてPKOの対象は国有大企業であるブルーチップに限定される。景気テコ入れの際には、国有大企業にその恩恵が集中し、民間・中小企業が蚊帳の外に置かれる「国進民退」が先鋭化するが、株式市場でも同じことが起ころうとしているのかもしれない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:トランプ関税2.0で25年は3.9%成長へ
迂回輸出は当面温存。「トランプ関税2.0」の長期化は想定せず
2025年04月23日
-
中国:米国の対中追加関税率は累計104%→145%、中国経済への悪影響はほぼ変わらず
中国は交渉(ディール)の用意があることを示唆
2025年04月11日
-
中国:米国の104%追加関税、悪影響には天井
累計104%の追加関税で中国の実質GDPを2.84%押し下げ
2025年04月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日