サマリー
アジア各国・地域の1-3月期の成長率はまちまちながらも、数で言えば「減速組」が勝る結果となった。そこには中国、韓国、台湾、香港、インドネシア、フィリピンが含まれる。「加速組」はインド、タイ、シンガポールなどに留まる(変化率は断りのない限り前年比)。
一方、「地域」単位で見ると、比較的強さが感じられるのが中東欧である。例えばチェコは昨年10-12月期から1-3月期にかけ、1.2%から4.2%へ、ポーランドは3.1%から3.7%へ加速している。バルト三国は減速しているものの、ルーマニア、スロベニア、スロバキアなども軒並み加速している。アジアも中東欧も、製造業立国が中心であるという共通点を有するが、足元の成長パフォーマンスを左右した一つの背景が中国ファクター、中国とのリンケージの強弱であろう。
通関統計によれば、中国の1-3月期の輸入は▲17.8%減少した。価格のみならず、数量も大幅に減少している。実のところ、1-3月期の中国のアジアからの輸入の減少幅は▲13.8%であり、全体(▲17.8%)よりも軽微だったのだが、アジアには対中輸出の総輸出に占める比率が高い国が多い。IMFによれば、主要国・地域の輸出の対中シェアは、中継貿易港・香港の50%超は別格とするにせよ、韓国で25%程度に達し、日本、主要ASEAN諸国などは軒並み10%を超えている。一方、チェコやポーランドを含む「欧州新興国」の輸出に占める中国シェアは1.4%に過ぎない。また、アジアの中でも同シェアが5%に満たないインドの成長率が1-3月期に加速したことも、同様の文脈で理解可能であろう。
アジア、欧州を問わず、製造業を中心とした国・地域は、昨年後半以降の原油等資源価格急落の恩恵を受けてきた。欧州では(先進地域を含め)それが比較的素直に成長率の底上げにつながった。アジアではその恩恵を相殺する中国経済の不振という悪材料があった。そして中国を含むアジアにとって重要なことは、資源価格下落の好影響が薄まる方向にあることである。
現在の中国経済は、再度、インフラ投資への依存度が高まる局面にあるが、このパターンが変わらず、他の分野の消費、投資需要が拡大しない以上、輸入の停滞は継続せざるを得ない。インフラ投資が誘発する財は、中国が自前で調達可能だからである。こうした中で、資源価格下落のメリットが失われていくことで、周辺アジア諸国の景気停滞色が強まっていく可能性があることは否定できない。当面、アジアのみならず中国依存度の高い国にとって、中国がリスク要因の中心に居座り続ける可能性は高い。
付け加えれば、こうしたリスクが顕在化する局面で、米国の利上げが実施される、或いはそれにかかわる市場の期待がリスク・オフをもたらすというのが、アジアにとってのもう一つの厄介なシナリオである。それは相対的な成長パフォーマンスの良好さという、リスク・オフ局面におけるアジアの強さの根拠を薄弱としてしまう可能性があるからである。
本稿は、大和総研レポート 海外経済『新興国マンスリー(2015年6月)』(2015年6月3日)を一部修正のうえ、転載したもの。
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