サマリー
中国人民銀行はマーケット機能を重視した金融政策体系の構築に取り組んできたが、それでもなお中国で最も有効な金融政策は窓口指導や貸出総量規制である状況に変わりはない。
足元の景気下振れリスクの増大に対応するため、中国は金融緩和を実施している。中小・零細企業向けの貸出を増やすという中国人民銀行の政策的意図を実現するために、窓口指導や貸出増加指示など行政指導的な政策が実施されようが、こうした貸出を行政指導によって増やせば、貸出の質が劣化し、将来的な不良債権が増えるリスクが高まることには注意が必要であろう。
これまで、窓口指導や貸出総量規制が効果を発揮してきたのは、潜在的な資金需要が大きいなか、供給サイド(銀行)の行動を変えることが有効な金融政策手段であったためである。しかし、中国の成長性が中長期的に一段と低下し、資金需要が大きく減っていけば、この前提は大きく崩れる。例えば、景気刺激を目的に、供給サイド(銀行)へいくら働きかけても需要サイド(経済、企業)のニーズがなければ、金融緩和策が効果を発揮できないことは、日本の経験が示す通りである。中国が今からその研究を深め、将来に備えるのに、決して早すぎることはあるまい。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日