サマリー
中国国有企業の変圧器メーカー、保定天威集団が4月21日を期限とする8,550万元(約16億6500万円)の中期手形(※1)の利払いをできずデフォルトに陥った。保定天威集団は4月14日に公告を出し、代替エネルギー事業での巨額損失を理由に、21日の社債利払いができなくなる可能性を明らかにしていた。
同集団は2011年から2014年まで4年連続で赤字を計上しており、2014年は101.4億元(約1,975億円)の赤字決算となった。
中国の市場では、これまでに上海超日太陽能科技と中科雲網科技集団の民間企業2社がデフォルトとなったが、国有企業ではこの保定天威集団が初めてのケースとなる。
保定天威集団の一部資産を再編して、2001年2月28日に上海証券取引所に上場したのが、保定天威保変電気である。同社の筆頭株主は中国兵器装備集団(持株比率33.47%)、第2位の株主は保定天威集団(同22.96%)であり、保定天威保変電気は今回デフォルトを起こしたグループ本体の中期手形の保証を行っている。
保定天威保変電気は2012年、2013年と連続赤字決算となり、上場廃止リスクを喚起する*ST(STよりも上場廃止リスクが高いと判断される特別処理銘柄)に指定されていたが、2014年決算が黒字に転じたため、2015年3月18日より、*STの指定が取り消されている。
2015年5月22日終値の同社の株価は13.18元と、2014年年初から2.5倍に急騰した。この間に上海総合株価指数も2.2倍となっているので、驚くほどではない。しかし、グループ本体が4月14日付けで、4月21日の利払いができなくなる旨の注意喚起公告を行ってからもなお、同社の株価が上伸したことには、違和感を抱かざるを得ない。普通のマーケットであれば、株価急落でこれに応えることになろう。同社の筆頭株主は中国兵器装備集団であり、いずれ政府や軍が何とかするに違いないという思惑が株高を支えている。
証券当局は、ファンダメンタルズ分析に基づく長期投資の重要性を繰り返し表明しているが、投資家が重視するのは口コミ情報やうわさである。さらに、問題のある上場会社は、(地方)政府が何とかするか、裏口上場の対象となって生まれ変わるとの強烈なモラルハザードが市場の価格形成を歪めている。
(※1)保定天威集団は、期間5年の中期手形(MTN)を2011年2月に10億元、同年4月に15億元発行した。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:力不足、あるいは迷走する政策と景気減速
依然不透明なトランプ関税2.0の行方
2025年08月22日
-
中国:年後半減速も2025年は5%前後を達成へ
不動産不況、需要先食い、トランプ関税2.0の行方
2025年07月22日
-
中国:内巻(破滅的競争)と上乗せ関税の行方
追加関税大幅引き下げでも製造業PMIは50割れが続く
2025年06月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日