サマリー
2014年11月10日、安倍晋三首相と習近平国家主席が北京の人民大会堂で会談した。経済規模で世界第2位と第3位の両国の首脳が、2年半にわたり直接対話ができないという不正常な状態に終止符が打たれた。
首脳会談に先立つ11月6日に、日中は関係改善に向けた4項目で合意した。日本の外務省が7日に発表した文書「日中関係の改善に向けた話合い」によれば、合意事項は以下の4点である。1.双方は、日中間の四つの基本文書の諸原則と精神を遵守し、日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した。2.双方は、歴史を直視し、未来に向かうという精神に従い、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた。3.双方は、尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。4.双方は、様々な多国間・二国間のチャンネルを活用して、政治・外交・安保対話を徐々に再開し、政治的相互信頼関係の構築に努めることにつき意見の一致をみた。
この2年あまりの間に、日中関係は「政冷経熱」(政治関係は冷え込んでいるが、経済関係は熱い)から「政冷経冷」(政治も経済も冷え込んでいる)に転じたとされる。その典型として持ち出されるのが、日本から中国への直接投資の急減である。確かに、日本から中国への直接投資は、2013年に前年比マイナス4.0%となった後、2014年1月~10月は同マイナス42.9%を記録するなど、急減している(中国商務部の統計)。それでは、日中間の政治関係改善で状況は大きく好転するのか?その気運が高まることは喜ばしいが、事はそう簡単ではないだろう。
国際協力銀行が2013年11月に発表した「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」によると、中国事業の中期的な懸念として掲げられたのは、①労働コスト上昇・労働力確保困難(全体の32.6%)、②他社との競争激化(25.3%)、③中国経済の減速(23.6%)、④日中間の政治的な関係の行方(17.4%)、の順であった。懸念の上位は経済的な問題なのである。今後も、中国に進出するか(中国事業を拡大するか)否かを経済的観点から冷静に判断しようという動きが続くのではないか。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国経済見通し:不動産不況、脱却はまだ先
住宅完成後販売への移行は◎。一段と悪化する内需と堅調な外需
2026年09月24日
-
中国:注目の6つのネットワークと内巻の影
新型電力、計算力、新世代通信で世界を席巻か?
2026年09月24日
-
中国:不動産不況脱却に真っ当な政策を発表
「工事中断問題」回避のため「完成後販売」への移行を推進
2026年09月02日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

