サマリー
3週間にわたり中国に滞在し、マクロ経済や不動産市場の行方などホットな話題について専門家との意見交換を重ねてきた。そのなかで、理解が難しかったのが、信託商品の問題である。
信託商品の残高急増は、2008年11月の4兆元の景気対策と密接な関係がある。当初は銀行貸出が資金調達で主導的な役割を果たしたが、その後、金融政策は引き締められ、強力な窓口指導によって不動産や設備過剰産業向けの貸出が抑制された。こうした産業の資金調達手段として台頭したのが信託商品である。ある信託会社のトップマネージメントは、12.5兆元(約206兆円)の残高のうち5,000億元(約8.3兆円)程度でデフォルト・リスクが高いとしていた。ここまでは理解できる。
しかし、信託商品で資金調達をした企業の経営不振などで元利払いに支障がでると想定される場合、何が起きるのか?との質問への回答は、「一部信託会社の経営リスクが高まる」というものであった。昨年12月の国務院弁公庁の内部通達では、「投資家の自己責任」が明記されていたのではなかったのか?しかも、信託商品の最低投資金額は100万元(約1,650万円)以上のものが多く、投資家は富裕層であり、リスク負担能力は高いはずである。
何故「一部」信託会社の経営リスクが高まるのか?中国の信託会社は、政府系、銀行・証券系、独立系に分かれ、このうち政府や銀行・証券会社の傘下にある信託会社の信託商品は、政府や親会社が返済を肩代わりするため、少なくとも元本は保証される。元本割れのリスクが高いのは、後ろ盾がない独立系の信託商品に限定される。仮に投資家の自己責任を求めれば、その信託会社の信託商品は人気が離散するのは明白であり、それを回避するために信託会社自身が肩代わりをするのだという。体力の弱い信託会社の経営リスクが増大する所以であり、それでも肩代わりができない時に初めて元本割れが発生するのである。
結局のところ、違和感の根底にあるのは、先方が信託商品は「元本保証」であることを前提としていたことであった。社会・経済の安定維持が何よりも優先される、というのが大義名分であるが、信託商品で損失補てんにより元本は必ず保証される状態が続けば、モラルハザードの改善は至難の業となる。地道な啓発活動はもちろん重要だが、タイミングや規模を吟味した荒療治の必要性が高まっているように思える。
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