サマリー
◆2014年6月に若干上向いた内需関連の主要経済指標は、7月には再び減速した。例えば、7月の小売売上(名目)は前年同月比12.2%増と、6月の同12.4%増から伸びが若干鈍化した。実質も同様に6月の同10.7%増⇒7月は同10.5%増となった。習近平総書記が主導する綱紀粛正の影響で2013年に大きく減速した飲食収入は、1年が経過した2014年に入って伸びが上向いていたが、6月以降は再び鈍化し、7月は同9.4%増にとどまった。綱紀粛正の手綱はさらに締められている。現地取材によれば、中国の最上級のホテル格付けは5つ星であるが、自ら4つ星への格下げを願い出るホテルが相次いでいる。三公経費(海外・国内出張費、公務接待費、公用車経費)の抑制が強化されるなか、5つ星ホテルでの宿泊や飲食は、申請の段階で撥ねられるのだという。
◆一方、輸出は、2013年4月までの「偽輸出」とみられる水増しによる反動減の影響が一巡し、2014年5月以降は実態に見合うデータが発表されている。7月は前年同月比14.5%増にまで伸びを高めた。「偽輸出」によるかさ上げ時期を除けば、2012年5月以来の高い伸びである。輸出の先行指標である主要先進国の製造業PMIは高水準で推移しており、当面は堅調な推移が続こう。
◆国務院弁公庁は8月14日に「企業の資金調達難を緩和するための10ヵ条の意見」を発表した。第1条では、「貸出総量の合理的で適度な増加を保持する」とし、「バラック地区の改造、鉄道、サービス業、省エネ環境などの重点分野と、農業・農村・農民向け、小型・零細企業など資金調達難に直面している分野・企業に有力なサポートを提供する」とした。全面的な金融緩和ではなく、あくまでも分野を限定した景気下支え策に徹する姿勢を再確認したといえる。
◆ここから読み取れるのは、4月以降の諸政策は、7.5%の政府経済成長率目標を達成するための景気下支えが目的であり、成長加速は期待してはいけないし、失速リスクも限定的ということなのであろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日