サマリー
習近平・李克強政権が前政権から引き継いだのは、①投資に過度に依存した経済発展パターンの限界、②膨張する地方政府債務とシャドーバンキング、③深刻化する環境汚染、④「国進民退」(国有企業が優遇され、民間企業が蚊帳の外に置かれる)に象徴される経済改革の停滞——といった負の遺産である。
残念ながら、2014年3月の全人代では安定維持が最優先され、諸問題の解決は先送りにされた印象が強い。例えば、国内債務問題のソフトランディングと構造改革推進を加速するのであれば、成長率目標はやや低めの方が好都合であるはずだったが、2014年の成長率目標は7.5%で据え置かれた。足元で消費が減速する中で、引き続き7.5%の成長目標を達成するには、投資に頼らざるを得ない。デフォルト騒ぎでシャドーバンキングを通じた資金仲介が停滞するのであれば、銀行貸出を増やさざるを得ず、バランスシートから外したリスクを再び銀行が負う懸念が高まる。銀行と大型国有企業との密接な関係は、「国進民退」が一段と進むことを示唆する。
本稿のテーマ「習近平・李克強政権下で経済政策は変わるのか?」に対する現時点の答えは「変わっていない」となる。その一方で、習近平氏は、党・国家・軍のトップを兼任し、2013年11月の三中全会で設置が決定された「全面的改革深化指導小グループ」と、「国家安全委員会」のトップにも就任するなど、胡錦濤前総書記とは異なり、権限を集中させている。これは、改革の意思決定と断行力を高め、抵抗勢力(既得権益層)を封じ込めるためなのかもしれない。今はその準備段階であるが故の「まだ」決められない政治が行われている可能性があり、今後の動向に注目したい。
いずれにせよ、いつまでも問題を先送りにして、「無理」をした成長を続けることは困難である。いずれは前政権時代の負の遺産への対応に真剣に取り組んでいく必要があり、その帰結の多くは成長率の鈍化となる。さらに、人口ボーナスは2010年で既にピークとなり、早晩、人口オーナスが経済成長の足枷となることもある。中長期的には、世界経済のエンジンとしての中国の役割は徐々に低下していこう。

大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:今後10年の長期経済見通し
第15次5カ年計画の基本方針、山積する構造問題に処方箋を出せず
2026年01月21日
-
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し(更新版)
不動産不況の継続と消費財補助金政策の反動で景気減速へ
2026年01月19日
-
中国が軍民両用品の対日輸出規制を強化
レアアースの対日禁輸措置の可能性
2026年01月07日
最新のレポート・コラム
-
大和のセキュリティトークンナビ 第3回 不動産セキュリティトークンとは?(後半)
不動産セキュリティトークンの発行・流通動向、税制
2026年01月26日
-
大和のクリプトナビ No.6 暗号資産制度WG報告と今後の注目点
業界再編や自主規制機関の体制整備、オンラインでの適合性確保に向けた議論が注目点か
2026年01月26日
-
米国アセット・ウェルスマネジメント業界のダイナミズム
~変革を生み出すイノベーションとは~『大和総研調査季報』2026年新春号(Vol.61)掲載
2026年01月26日
-
デジタル通貨覇権競争の幕開けと次世代決済の展望
『大和総研調査季報』2026年新春号(Vol.61)掲載
2026年01月26日
-
消費税率の引き下げは本当に低所得世帯支援に最適な政策なのか
2026年01月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
-
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
-
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日

