サマリー
中国経済の動きをつかむにはどんな指標に注目すればよいのか?少し前なら、李克強首相が地方の指導者時代に注目していたとされる、人民元貸出増加額、電力消費量、鉄道貨物輸送量を挙げる向きが多かったであろう。しかし、この「李克強の三指標」の有効性は大きく低下している。
金融システムから経済に供給された資金の純増減額である社会資金調達金額の内訳をみると、2002年には人民元貸出増加額が全体の9割を占めていたが、今は5割強程度になり、人民元貸出増加額と社会資金調達金額は必ずしも連動しない。ちなみに、2014年1月~3月は前者の前年同期比9.4%増に対して、後者は同9.3%減と正反対の動きとなっている。銀行との関係が密接な大型国有企業はある程度、銀行借入で資金を手当てできているが、銀行へのアクセスが限定的な中小企業は資金調達難に直面している。
電力消費量については、経済のサービス化など産業構造の高度化や、鉄鋼など電力消費量が多い重厚長大型産業の動向の影響を大きく受ける。これら産業が抑制対象となれば、当然、電力消費量の伸びも低下する。
鉄道貨物輸送量は、道路網の拡充がそれを代替する可能性があるし、輸送量の多い資源・エネルギーの在庫状況が大きな変動要因となりうる。
では冒頭のシンプルだが難しい質問にどう答えるのか?マーケットが注目するのは、月次統計で最も早く発表(当月下旬に発表)されるHSBCの製造業PMIである。加えて翌月1日に発表される国家統計局の製造業PMIとの違いにも注目したい。この2つのPMIには、HSBCは融資先の中小企業のカバーが充実しているのに対して、国家統計局は大型国有企業が中心という特徴がある。1月~4月のHSBCのPMIが4ヵ月連続で拡大と縮小の分岐点である50を下回った(4月の速報値は48.3)一方で、1月~3月の国家統計局のPMIがかろうじて50を上回っているのは、民間中小企業と大型国有企業の景況の差であろう。
2つのPMIをどう活用するのか?中小企業を含めた景気の実態を感じるにはHSBCのPMIを見るのがよい。工業生産などマクロ統計の先行きを占うのであれば、国家統計局のPMIがより有効である。国家統計局のPMIとマクロ統計がともに大企業中心であることが、PMIの先行性と両者の連動性を高めている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:26年2Qは4.3%成長、内需が急減速
4月~6月は政府成長率目標の下限を下回る
2026年07月16日
-
中国:内需テコ入れに利下げは逆効果も
4~6月は4.3%成長に減速。預金準備率引き下げ、財政出動が有効か
2026年07月15日
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
最新のレポート・コラム
-
中間配当の導入は株価を動かすか
開示直後は好感されるも、効果のインパクトや持続力は弱い
2026年07月17日
-
経済産業省「公正な買収の在り方に関する研究会」による企業買収行動指針のポイント・Q&A(案)
指針の趣旨を明確化~「企業価値」や「望ましい買収」とは?~
2026年07月17日
-
「トランプ口座」始動、未来の株主多数輩出
口座開設、「収益獲得」ではなく「次世代投資家との接点」
2026年07月17日
-
データサイエンスを踏まえた年金数理理論の人的資本分析への発展可能性
新たな退職率算定方法による退職要因分析への応用
2026年07月17日
-
AI時代の競争力を生むのは誰か? ~シリコンバレーとシアトルが示す「人材エコシステム」の力~
2026年07月17日
よく読まれているリサーチレポート
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
-
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
-
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
-
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日

