サマリー
◆2013年の中国経済は地方政府債務やシャドーバンキングが急膨張するなか、従来型の投資主導で7.7%成長となった。この3月の全人代では2014年の実質GDP成長率目標は7.5%前後に据え置かれた。中国は2014年も形は多少変わるとしても、やはり「無理」をして成長率を維持することを選んでしまったのである。
◆3月13日に行われた記者会見で李克強首相は、金融商品のある程度のデフォルトを容認しつつ、システミックリスクの発生を防ぐ旨の発言をしたが、これはかなり綱渡り的である。投資家がリスクにより敏感になり、シャドーバンキングを敬遠する動きが続くのであれば、銀行貸出がそれを一部補わざるを得ない。バランスシートから外したリスクを再び銀行が負うことで、銀行の潜在的不良債権の増加懸念も高まろう。
◆2014年1月~2月の主要経済指標は中国の景気が減速していることを示しており、4月にもファインチューニング(微調整)による景気下支えが行われる可能性がある。インフラ、環境保護、戦略的新興産業などの投資増加により、景気はある程度下支えされようが、明確な回復感には乏しい状況が続くと想定している。
◆従来、大和総研は、中国が債務の急膨張を抑制し、構造改革を推進するという期待を込めて成長率目標を7.0%と仮定し、2014年の実質GDP成長率見通しを7.2%と予測した。しかし、残念ながら2014年の成長率目標は引き続き7.5%となった。これを受けて大和総研による2014年の成長率見通しを7.5%に引き上げる。引き続き、投資にやや無理をさせた成長を想定し、固定資産投資の伸びを従来の前年比17.0%増から同18.7%増へ引き上げた。成長率見通しの引き上げは、好ましいことが多いのだが、今回は決してそうではない。
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