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2013年12月24日

サマリー

2013年12月6日付けで中国共産党中央組織部は「地方の党・政府指導グループと指導幹部の政績(政治的成績)評価制度の改善に関する通知」を発表した。これによって、共産党幹部の昇進に当たり、何が重視されるかが明らかになった。


特徴的なのは、域内総生産額やその伸び率の扱いが大きく低下したことである。通知では、域内総生産とその伸び率だけで政績を評価してはならず、それを順位付けすることも禁止された。特に、農業地域や環境保護区はそれぞれ農業生産や環境保護状況が最優先され、域内総生産や工業生産は評価対象から外される。貧困地区でも域内総生産は問われず、貧困脱却に向けた開発援助の成果が評価対象とされた。


政績評価は、持続可能な経済発展、民生改善、和諧社会(バランスのとれた社会)構築、文化建設、生態(エコ)文明の建設、党の建設などの総合評価とされ、資源消耗、環境保護、生産能力過剰の抑制、安全生産などの指標のウエイトを増やし、科学技術革新、教育文化、就業、住民収入、社会保障、住民の健康状況などの評価を重視するとしている。


さらに、地方政府に対して、債務への評価を強化し、政府の負債状況を重要な評価指標とすることにも言及があった。指導者が自らの名声や地位を高めるために、地元のニーズや受容能力にそぐわない華美な建造物や大規模工場を建設するなどの「政績プロジェクト」や「形象プロジェクト」は禁止され、高投入・高消耗・高汚染の「三高」産業に依存する粗放型成長方式や闇雲に業績を上げることも是正するとされた。国家利益や民衆の利益に重大な損失を与えた者、資源の深刻な浪費を行った者、生態環境に深刻な破壊をもたらした者、回収困難な不良債権を残した者は処分対象となり、離任後も責任が問われる。


こうした方針は、11月に開催された中国共産党第18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)で既に示されていたが、1ヵ月足らずで明文化された。あとは客観的な評価方法が早急に決められ、政績表の結果と「不可」がついた場合の実際の処分が公表される必要がある。それが、政績評価の実効性が高まるか否か、さらに言えば持続的安定成長の可否の分かれ道となろう。

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