サマリー
2013年12月6日付けで中国共産党中央組織部は「地方の党・政府指導グループと指導幹部の政績(政治的成績)評価制度の改善に関する通知」を発表した。これによって、共産党幹部の昇進に当たり、何が重視されるかが明らかになった。
特徴的なのは、域内総生産額やその伸び率の扱いが大きく低下したことである。通知では、域内総生産とその伸び率だけで政績を評価してはならず、それを順位付けすることも禁止された。特に、農業地域や環境保護区はそれぞれ農業生産や環境保護状況が最優先され、域内総生産や工業生産は評価対象から外される。貧困地区でも域内総生産は問われず、貧困脱却に向けた開発援助の成果が評価対象とされた。
政績評価は、持続可能な経済発展、民生改善、和諧社会(バランスのとれた社会)構築、文化建設、生態(エコ)文明の建設、党の建設などの総合評価とされ、資源消耗、環境保護、生産能力過剰の抑制、安全生産などの指標のウエイトを増やし、科学技術革新、教育文化、就業、住民収入、社会保障、住民の健康状況などの評価を重視するとしている。
さらに、地方政府に対して、債務への評価を強化し、政府の負債状況を重要な評価指標とすることにも言及があった。指導者が自らの名声や地位を高めるために、地元のニーズや受容能力にそぐわない華美な建造物や大規模工場を建設するなどの「政績プロジェクト」や「形象プロジェクト」は禁止され、高投入・高消耗・高汚染の「三高」産業に依存する粗放型成長方式や闇雲に業績を上げることも是正するとされた。国家利益や民衆の利益に重大な損失を与えた者、資源の深刻な浪費を行った者、生態環境に深刻な破壊をもたらした者、回収困難な不良債権を残した者は処分対象となり、離任後も責任が問われる。
こうした方針は、11月に開催された中国共産党第18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)で既に示されていたが、1ヵ月足らずで明文化された。あとは客観的な評価方法が早急に決められ、政績表の結果と「不可」がついた場合の実際の処分が公表される必要がある。それが、政績評価の実効性が高まるか否か、さらに言えば持続的安定成長の可否の分かれ道となろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国経済見通し:内需不振で強まる減速傾向
2026年は自動車販売台数も急減速(あるいは減少)か
2025年09月24日
-
中国:力不足、あるいは迷走する政策と景気減速
依然不透明なトランプ関税2.0の行方
2025年08月22日
-
中国:年後半減速も2025年は5%前後を達成へ
不動産不況、需要先食い、トランプ関税2.0の行方
2025年07月22日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日