サマリー
◆国家統計局によると2013年7月~9月の中国の実質GDP成長率は前年同期比7.8%と、3四半期ぶりの成長加速となった。1月~9月は同7.7%成長であり、年間政府目標7.5%の達成の可能性が高まった。
◆1月~9月の固定資産投資は、前年同月比20.2%増と1月~6月の同20.1%増からほぼ横ばいであった。東西格差縮小のためのインフラ投資については、資金調達問題が付きまとうが、当面は大きな懸念はない。地方政府のインフラ投資資金の出所の一つである土地使用権売却収入が、急増しているためである。土地使用権売却価格の上昇は、不動産価格上昇の結果という側面が強い。ここからは、①その背景となっている不動産価格上昇に対して、2013年3月の価格抑制策「国5条」が一段と強化される可能性、②売却収入の増加は、地方政府融資平台の債務返済能力の増強につながるため、当面の不良債権急増リスクが大きく後退する可能性、が示唆されよう。
◆9月の輸出は前年同月比0.3%減と6月以来再びの前年割れとなったが、これは、連休の並びというカレンダー要因によるところも大きく、それを除く季節調整済みでは、同5.3%増と発表されている。今後は、需要先である米国、EU、日本といった先進国の景気が上向くことで、中国の輸出環境は改善する。「偽輸出」要因を除くと中国の輸出は、実態としては回復傾向が続く可能性が高い。
◆実質小売売上は底固い推移が続いているとはいえ、景気の牽引役としては力不足である。小売売上の伸び率と所得増加率はほぼ連動しており、如何にして所得環境を改善していくのかが今後の課題である。具体的には、①行政改革(各種行政費用の減免)や物流改革(物流コスト削減)などによる企業業績の改善、②社会保障の拡充や所得税減税(所得控除額の引き上げ)、③戸籍制度改革を伴う都市化推進、など中長期的な視野に立った諸政策が必要不可欠である。11月に開催が予定される中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)でどのような「構造改革」の方針が示されるかが、注目されよう。
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