サマリー
中国の住宅価格が大きく上昇している。ロイター社が集計する全国70都市新築住宅価格は、2012年5月~7月の前年同月比▲1.5%をボトムに上向き、2013年1月以降プラスに転じた。政府は早くも2013年3月1日に「国5条」と呼ばれる価格抑制策を打ち出したが、その後も上昇を続け、7月は同+7.5%となった。
「国5条」では、主要35都市に保障性住宅を除く新築商品住宅価格の抑制目標を設定することを求め、ほとんどの都市が当該地域の都市住民一人当たり可処分所得の実質伸び率を下回ることを目標に掲げた。国家統計局によると、2013年7月の新築商品住宅価格上昇率上位は、北京市(同+18.3%)、広東省広州市(同+17.4%)、広東省深圳市(同+17.0%)などであるが、例えば、北京市の2013年1月~6月の都市住民一人当たり可処分所得は実質5.9%増にとどまるなど、抑制目標を大きく逸脱している。「国5条」では、住宅価格安定に対する地方政府の問責制度を整備するとしているが、こうした都市の責任が問われたという話は聞かない。深圳市では2013年に入って抑制目標の基準となる所得の統計が発表されず、検証の手立てさえ整備されていない。仮に検証頻度が年1回だとすれば、政策対応が後手に回ることを意味する。一方で、7月の浙江省温州市の新築商品住宅価格は同▲2.6%となるなど、全国一律の住宅価格抑制策の導入は現実的ではない。
しかし、地方政府に多くを委ねる「国5条」の実効性は低いと言わざるを得ない。地方が住宅価格を下げたくないのは、土地使用権売却収入が地方財政収入の多くを占めるためであり、景気減速で財政収入の伸びが鈍化する中では、土地使用権売却収入への依存度がさらに高まることになる。また、地方政府は融資平台(中国版第三セクター)を通じて不動産開発を行っており、住宅価格の下落は資産の劣化につながるという事情もある。結果として、これまでの住宅価格抑制策は抜本的な解決策とはなり得ない。
まずは、土地使用権売却収入の増減が、地方の財政収入を大きく左右する状況を変える必要がある。例えば、広く浅く住宅ストックに課税する固定資産税の導入などによって、地方政府の安定的な財政収入基盤を強化する一方で、土地使用権売却収入を中央の財源として、保障性住宅の建設加速や地方の都市・農村建設に有効活用できるような税制改革も必要になってこよう。
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