サマリー
2013年4月、地方政府の債務が巨額かつ債務の中身が不透明だということが懸念され、中国の人民元建て長期国債が格下げされた。
地方政府の巨額債務には、地方融資平台が深く関わる。これは地方政府傘下の投資プラットフォームであり、リーマン・ショック後に行われた4兆元の景気対策の中、資金調達が制限されている地方政府の代わりに銀行融資や債券発行等で集めた多額の資金をインフラなどに投資した結果、巨額の債務を抱えた。
地方政府の債務問題に対し、中国政府は地方融資平台の資金調達手段に制限を加え、債務リスクを減少させようとしている。融資については、2013年4月10日に発表された「2013年地方融資平台のリスク監督・管理に関する指導意見」によって、キャッシュフロー比率が100%以下あるいは資産負債比率が80%を上回る地方融資平台に対して新規に貸出をする場合、すべての地方融資平台への貸出に占める当該地方融資平台への貸出の割合は2012年の水準を超えず、かつ貸出の減少および貸付金の回収を進める措置を取ることが求められた。
加えて、中国政府は地方融資平台が集めた資金を政府が推進するプロジェクトに投資させようとしている。上記の指導意見では、新規貸出の主要な資金使途として、①「公路法」に沿った有料道路関連プロジェクト、②国務院が批准し、かつ自己資金が払い込まれている重大プロジェクト、③「土地備蓄と融資管理の強化に関する通知」の要件を満たし、かつ国土資源部に登録している土地備蓄機関による土地収用プロジェクト、④保障性住宅関連プロジェクト、⑤進行度が60%以上かつキャッシュフロー比率が100%を超えるプロジェクト、が示された。
これらの政策の影響によって、中国の投資プロジェクトは選別が進み、効率の高いプロジェクトや、保障性住宅のように政策上必要とされるプロジェクトへの投資の集中が一層進むと考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国経済見通し:内需不振で強まる減速傾向
2026年は自動車販売台数も急減速(あるいは減少)か
2025年09月24日
-
中国:力不足、あるいは迷走する政策と景気減速
依然不透明なトランプ関税2.0の行方
2025年08月22日
-
中国:年後半減速も2025年は5%前後を達成へ
不動産不況、需要先食い、トランプ関税2.0の行方
2025年07月22日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日