サマリー
◆理財商品(資産運用商品)は、より高い利回りを求める投資家や収益拡大を狙う銀行、資金調達難の不動産開発等の投資プロジェクトや中小企業の資金需要もあり、近年急速に拡大してきたが、一方で投資対象が曖昧であることなどの問題も抱えている。このようななか、2013年3月27日に、中国銀行業監督管理委員会(銀監会)は「商業銀行の理財業務における投資管理の規範問題に関する通知」を発表した。
◆通知の中でも特に、「非標準化信用資産(市場で運用を行わない貸出資産、信託貸出、委託債権、引受手形、未収金、各種受益権など)の残高は総資産の4%または理財商品の残高の35%のうち低い方を超えてはならない」と規定した項目が注目された。銀行が基準を上回った分の非標準化信用資産を圧縮する過程で、不動産開発等の投資プロジェクトの停滞や中小企業の資金調達難が懸念されたが、銀行全体で見れば、非標準化信用資産を大幅に削減する必要性は低い。
◆まず、通知で示された非標準化信用資産の残高の上限を具体的にみると、2012年末時点の総資産である133.6兆元の4%は約5.3兆元、理財商品の残高である7兆元余りの35%は約2.5兆元となる。よって非標準化信用資産の残高は理財商品の残高の35%を超えてはならないことが問題となる。中財網の報道などによれば、多くの銀行において、理財商品の残高に占める非標準化信用資産の割合は35%から40%程度であり、基準と同程度かやや上回る程度にすぎない。加えて、銀行は市場運用型の理財商品を増加させることで非標準化信用資産の割合を減少させることが可能である。
◆そのため、今後は理財商品を通じた投資の中でも、一部の期待収益率の低い不動産開発等の投資プロジェクトへの投資が抑制されると考えられる。
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