サマリー
◆中国で格差問題が改めて注目されている。2012年11月8日から14日まで行われた中国共産党第18回党大会の期間中、胡錦濤前総書記は2020年までに全面的な小康社会(ゆとりのある社会)を実現するための目標のなかで、急速な経済成長による貧富の格差拡大の是正を強調した。さらに、米国の調査機関であるPew Research Center が2012年に発表した報告によれば、中国人の81%が、この数年で富裕層はさらに富み、貧困層はさらに貧しくなったと回答している。
◆格差の中でも最も問題となるのが都市・農村間格差である。国家統計局によると、都市・農村間の所得格差は2009年には3.33倍まで達した。その後農村部の賃金収入が拡大したことで2011年時点では所得格差は3.13倍と改善したが、ILO(国際労働機関)によれば多くの国では都市・農村間の所得格差は1.6倍以内とされ、国際的に見ても中国の都市・農村間格差は極めて大きい。
◆今後中国政府は所得格差を縮小するため、大きく分けて「高所得者の所得を抑制する」「低所得者への支援を強化する」といった2つの手段を取ることが可能であるが、前者の手段を取ることはかなり困難であろう。その理由は高所得者の中には国有企業の幹部や高級官僚などの既得権益層が多く、彼らに不利益を与える政策は進めにくいことが考えられる。
◆高所得者の所得抑制が現実的に難しいとみられることから、格差を縮小するためには低所得者への支援を大幅に強化することが必要とされる。具体的には内陸部を中心とした低所得層の多い農村部を支援するため、[1]最低賃金を引き上げる、[2]農産物の買い入れ価格を引き上げる、[3]都市化の進展、などの政策をさらに推進すると考えられる。中国政府は輸出・投資主導経済から消費主導経済への転換を目指しており、消費の源泉となる所得を増加させる効果がある政策を持続すると考えられよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:堅調スタートも持続性には疑問符
不動産不況、需要先食いのツケ、中東情勢緊迫化
2026年03月24日
-
中国:第15次5カ年計画を読み解く
成長率目標は設定されず。数値目標は安全保障の優先度上昇を示唆
2026年03月16日
-
中国:成長率目標引き下げも達成は困難か
さらに強化した積極的財政政策は有名無実化
2026年03月06日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
-
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
-
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日

