中国:対応が必要とされる所得格差問題

農村部の所得テコ入れ策がさらに推進か

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2012年12月27日

サマリー

◆中国で格差問題が改めて注目されている。2012年11月8日から14日まで行われた中国共産党第18回党大会の期間中、胡錦濤前総書記は2020年までに全面的な小康社会(ゆとりのある社会)を実現するための目標のなかで、急速な経済成長による貧富の格差拡大の是正を強調した。さらに、米国の調査機関であるPew Research Center が2012年に発表した報告によれば、中国人の81%が、この数年で富裕層はさらに富み、貧困層はさらに貧しくなったと回答している。


◆格差の中でも最も問題となるのが都市・農村間格差である。国家統計局によると、都市・農村間の所得格差は2009年には3.33倍まで達した。その後農村部の賃金収入が拡大したことで2011年時点では所得格差は3.13倍と改善したが、ILO(国際労働機関)によれば多くの国では都市・農村間の所得格差は1.6倍以内とされ、国際的に見ても中国の都市・農村間格差は極めて大きい。


◆今後中国政府は所得格差を縮小するため、大きく分けて「高所得者の所得を抑制する」「低所得者への支援を強化する」といった2つの手段を取ることが可能であるが、前者の手段を取ることはかなり困難であろう。その理由は高所得者の中には国有企業の幹部や高級官僚などの既得権益層が多く、彼らに不利益を与える政策は進めにくいことが考えられる。


◆高所得者の所得抑制が現実的に難しいとみられることから、格差を縮小するためには低所得者への支援を大幅に強化することが必要とされる。具体的には内陸部を中心とした低所得層の多い農村部を支援するため、[1]最低賃金を引き上げる、[2]農産物の買い入れ価格を引き上げる、[3]都市化の進展、などの政策をさらに推進すると考えられる。中国政府は輸出・投資主導経済から消費主導経済への転換を目指しており、消費の源泉となる所得を増加させる効果がある政策を持続すると考えられよう。

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