サマリー
4月28日に、2010年11月1日午前零時を基準時点とする10年に一度の人口センサスの結果が発表された。主な結果は、①総人口は13億3,972万人、10年間の年平均増加率は0.6%、②世帯数は4億152万世帯、1世帯当たり人数は3.1人で10年前から0.3人減少、③男女比は51.3:48.7(10年前は51.6:48.4)、④年齢構成比は0~14歳16.6%(6.3%ポイント低下)、15~59歳70.1%(3.4%ポイント上昇)、60歳以上13.3%(2.9%ポイント上昇)、⑤10万人当たりの大学卒業程度の学歴保有者は3,611人から8,930人に増加。非識字率は6.7%から4.1%に低下、⑥都市化率は36.2%から49.7%へ10年間で13.5%ポイント上昇、⑦戸籍登録地から半年以上離れている人は2億2,143万人で、10年間で81.0%増加、などであった。結果だけみると、人口増加が抑制され、男女バランスは若干改善され、労働年齢人口が増加し、高学歴化と都市化が進むなど、良いこと尽くしにみえる。
しかし、1980年からの一人っ子政策の弊害は着実に中国経済に暗い影を落とそうとしている。馬建堂・国家統計局長によると、2013年以降、「労働力資源」(15歳~59歳)は徐々に減少するが、2020年までは9億人前後で安定するという。一方で、64歳までを生産年齢人口とする国連推計では、2015年がピークでその後2025年まではほぼ変わらないとしていた。両者の違いは、退職年齢であるが、中国でより現実的なのは60歳定年である。日本などでは、労働力不足への対応策のひとつとして、退職年齢の延長が挙げられるが、中国ではその効用は小さい。中国の60歳前後の平均教育年数は6年程度、40歳前後でも9年程度にとどまり(日本の40歳前後は13~14年)、労働力の質的な問題がある。
政府系シンクタンクである社会科学院の研究グループは、少子高齢化の進展により、中国の潜在成長率は2010年~2015年の9.6%から、15年~20年は7.3%、20年~30年は5.8%に低下すると警告している。2013年には労働投入の増加に依存する成長は難しくなる。今回の人口センサスは、労働力の質的向上や経済発展パターンの転換をはじめとする経済構造改革が待ったなしという、厳しい現実を中国に突き付けたといえる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
「103万円の壁」与党改正案の家計とマクロ経済への影響試算(第4版)
71万人が労働時間を延ばし、個人消費は年0.5兆円拡大の見込み
2025年01月21日
-
欧州サイバーレジリエンス法(EU Cyber Resilience Act)の発効
DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載
2025年01月21日
-
2024年11月機械受注
民需(船電除く)は2カ月連続で増加し、政府の基調判断は上方修正
2025年01月20日
-
米銀大手のビットコイン現物ETF保有、急増
【2024年推移】ヘッジファンドに迫る、約$7.2億保有の大手銀行あり
2025年01月20日
-
ソーシャルメディアは経済への影響力を増すか?
2025年01月20日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
-
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日