サマリー
中国で「一人っ子政策」が実施されて2010年で30年を迎えた。一人っ子政策は出生率の急激な低下をもたらし、経済発展による死亡率の低下・長寿化により、社会の高齢化問題がクローズアップされている。中国国家計画生育委員会によると、中国の合計特殊出生率(一人の女性が生涯で産む子供の数)は、1992年以降、人口置換水準(人口が減りもしなければ増えもしない)を下回った。一方で、平均寿命は長寿化した結果、65歳以上人口の総人口比は2000年に7.0%と、中国は発展途上国で最も早く老齢化社会入りをした。経済発展段階は途上国なのに、人口構造だけが、先進国化してしまったのである。
この先、中国の高齢化問題はさらに先鋭化する。2008年の国連人口予測によると、①人口ボーナス値(労働年齢人口/(14歳未満人口+65歳以上人口))は2010年にピークとなり、その後低減、②労働年齢人口は2015年に9.98億人とピークを迎え、2030年~2050年の20年間で1億人強減少、③65歳以上人口の構成比は、2030年には15.9%と高度高齢化社会に入り、2050年には23.3%と超高齢化社会の一歩手前となるとされる。このことは中国経済の長期見通しにも暗い影を落とすことになろう。
処方箋のひとつは、一人っ子政策の見直しによる急激な少子化の緩和である。中国の学者達は、少子高齢化緩和の切り札として、「二人っ子政策」への転換を政府に提言している。中国では、一部の地域で二人っ子政策がテストケースとして20年以上続けられているが、その結果は良好で、出生率は上昇したが合計特殊出生率が置換水準(2.1)を超えることはなく、男女比も正常であるという。一人っ子政策の放棄により、人口が再び急増するとの懸念もでようが、これは杞憂である。①都市部では、ライフスタイルの変化による未婚比率の上昇や晩婚化、さらには教育費の高騰など、一人っ子政策以外の出生率低下要因もあること、②中国全体として出産年齢人口が減少することから、政策転換の効果は、出生率のある程度の上昇、すなわち少子化をより緩やかなものにする効果にとどまろう。今後の中国の長期的な成長性を占う要因のひとつとして、一人っ子政策の行方にも注目したい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:成長率目標引き下げも達成は困難か
さらに強化した積極的財政政策は有名無実化
2026年03月06日
-
中国:敵失による景気押し上げの可能性
米国の中国からの輸入品に対する追加関税は20%→15%に低下
2026年02月24日
-
中国経済見通し:2026年の全人代の注目点
2026年の政府成長率目標は前年比4.5%~5.0%に設定か
2026年02月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
理系進路選択に対する男女差の要因分析
女性の理系人材を増やすには、より早期段階での介入や対応が必要
2026年02月06日
-
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
-
第228回日本経済予測
第2次高市政権の重点政策、どう進めるか①外国人労働者受け入れ、②消費減税/成長・危機管理投資、を検証
2026年02月20日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
理系進路選択に対する男女差の要因分析
女性の理系人材を増やすには、より早期段階での介入や対応が必要
2026年02月06日
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
第228回日本経済予測
第2次高市政権の重点政策、どう進めるか①外国人労働者受け入れ、②消費減税/成長・危機管理投資、を検証
2026年02月20日

