中国経済:経済大国が抱える貧困と所得格差

RSS

2012年08月01日

  • 金森 俊樹

サマリー

◆中国では昨年、貧困基準が大幅に引き上げられた。中国は、以前から明示的に貧困削減対策に取り組んできており、貧困人口の削減という点では、国際的に見ても大きな成果を挙げている。他方、貧困対策関連支出の有効性・妥当性については、その資金管理等の面で、様々な問題が指摘されている。

◆中国が貧困基準を引き上げるのは、国内的には、貧困問題に積極的に取り組んでいることを示す一方、国際的には、中国がなお多くの貧困人口を抱えた途上国であると主張する意味がある。

◆高成長の下での貧困の存在は、所得格差の拡大を意味している。格差拡大の社会的影響、今後の見通しについては、経済成長や経済発展段階との関連で検討する必要がある。

◆巨額の「隠れた収入」の存在は、貧困問題や所得格差等の面で、様々なインプリケーションを有している。特に、その存在が、貧困の緩和、ひいては社会の安定に繋がっているという皮肉な側面も考えられ、そうであるとすると、「隠れた収入」にどう対応するのか、問題は複雑である。

本稿は、外国為替貿易研究会発行「国際金融」2012年7月号に掲載されたものを加筆修正の上、転載している。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。