中国経済の構造問題を反映する人民銀行の金融政策

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2012年04月09日

  • 金森 俊樹

サマリー

◆2003年の法改正でマクロ調整機能に特化することになった中国人民銀行の制度面の特徴として、「中央銀行の独立性」の問題、「人民銀行行長の権限・影響力の程度」、「中央と地方、特に上海との緊張関係」に注意する必要がある。

◆人民銀行は、金融政策手段として、預金準備率の変更に大きく依存してきているが、その背景には、金利調整に比べ関係者の合意が得やすいこと、伝統的に政府が低金利下で成長率維持を図ろうとする傾向が強いこと等がある。

◆マネーサプライも、成長率との関係で過剰に供給される傾向が見られてきたが、これにも、中央銀行が、成長率を重視する政府や国有企業等の既得権益集団からの影響を強く受けてきたという背景が指摘できる。

◆マネーサプライの動向、さらには市場に根ざした金融政策へ転換していくかどうかは、社会経済上の構造問題が改善しつつあるのかを測る指標にもなる。さらに、適切な金融政策立案の前提として、金融統計の信頼性の問題にも注意する必要がある。

(注)本稿は、外国為替貿易研究会発行の雑誌「国際金融」2012年3月号に掲載されたものである。

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