サマリー
中国自動車工業協会から発表された12年1-2月の自動車生産・販売台数はマイナス成長となった。外資ブランドは根強い人気に支えられている一方、中国国内メーカーの自主ブランドは不振とされている。
中国工業情報化部は12年2月24日に公用車として購入許可がされる25社の412車種を暫定発表。外資合弁ブランドは外された。乗用車市場の5%に満たないとはいえ、中国政府は公用車の約8割が外資ブランドという現状を打破し、1,000億元規模の市場を振り分け、景気に左右されにくい方法で国内メーカーの発展に繋げようとする姿勢を明確にした。また、国家発展改革委員会と商務部は11年12月24日に外商投資産業指導目録の改訂を発表し、完成車生産を奨励リストから外す一方、国内外の専門家から指摘されている技術面での遅れをキャッチアップするため、外資との新規合弁会社には、R&Dセンターの設置や新エネルギー自動車の開発の義務を課している。
一方で、中国政府は環境汚染の逓減を実現するため、低排ガス・低エネルギーの車種に限って、登録自動車などに毎年課される車船税の減税を実施すると12年3月8日までに正式発表した。車船税の区分も従来の2段階から7段階に細分化したものを12年初に遡って適用する。減税対象車のうち半分以上が外資ブランドとなった。
中国の自動車産業にはジレンマが生まれている。“世界展開できる中国自動車メーカー”を主張するため、排ガス基準などをグローバルスタンダードにする『政策』だけが先走り、ボトルネックの『技術力』の底上げに効果的な政策が打たれていない。開発の難度が高いエンジンなどは外資ブランドの部品を搭載して凌ぐのか、このまま国内メーカーは淘汰されてしまうのか。是正すべき点は他産業との協力体制の不備にも及ぶ。排ガス基準に対応したガソリン供給は車体への基準適用時期から約2年遅れて整備されることが頻発している。現在も中国で普通車に適用されている排ガス基準「国4」対応のガソリン販売は北京・上海・広州に限られている。顧客層が地方の低・中所得者層に偏る国内メーカーに不利である。このジレンマをどのように克服してゆくのか、注目されよう。
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