省エネ・環境保護の投資増加にも注目

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2011年10月27日

サマリー

中国国務院は、2011年9月7日に「第12次5ヵ年計画の省エネ・汚染物質排出削減総合活動計画」を発表した。主な数値目標は、(1)2015 年までの5 年間で単位GDP当たりエネルギー使用量を16%削減する、(2)水質汚染物質のCODと大気汚染物質の二酸化硫黄は排出量自体を8%削減する、(3)アンモニア性窒素と窒素酸化物は同様に10%削減する、ことなどであり、2011年の削減率は、エネルギー使用量3.5%、その他は1.5%と設定された。従来のように5年に一度ではなく、毎年評定を行い、四半期毎のモニタリングも実施することで、実効性を高めようとしているのである。中国は、世界的金融危機への対応として2008年11月に4兆元の景気対策を発表。成長確保を重視するあまり、省エネ・環境保護が棚上げとなり、2010年4月以降になって電力、鉄鋼など高エネルギー消費・高汚染物質排出産業の生産を行政命令で急速に絞り込んだ結果、病院など民生施設の停電や企業の正常な生産活動の阻害といった問題が噴出した。今回の年度評定の実施や四半期毎のモニタリング強化は、こうした反省に立ったものであろう。

「総合活動計画」では、電力、石炭、鉄鋼、有色金属、石油石化、化工、建材、製紙、紡績、染色の旧式設備の廃棄が進められ、同産業の速過ぎる生産増加を抑え、設備廃棄を前提としない新規投資や輸出も抑制される。一方で、省エネや環境保護に繋がる投資は推奨されるというプラス面にも注目したい。例えば、当局は今後5年間で1.6兆元(約19.4兆円)を投じてスマートグリッドを建設する計画を発表し、2012年から実施される火力発電所の排出基準の厳格化では、発電施設の改造や脱硫脱硝設備の設置に2,600億元(約3.1兆円)の投資が必要とされている。

この他、エネルギー消費量と環境負荷の低い、サービス産業と戦略的新興産業の育成も注目されよう。サービス産業では、金融、物流、観光などが重点育成される。戦略的新興産業とは、知識・技術集約型で資源消耗が少なく、潜在成長力が高い産業であり、(1)省エネ・環境保護、(2)新世代情報技術、(3)バイオ、(4)ハイエンド装置製造、(5)新エネルギー、(6)新素材、(7)新エネルギー車の7分野が指定を受けた。「総合活動計画」では、戦略的新興産業の生産額が名目GDPに占める割合を2010年の2%から2015年には8%前後に高めることが、改めて目標として確認されている。

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