2022年09月07日
サマリー
◆米国で金融引き締めが進んでいる。フェデラルファンドレートの引き上げに加え、バランスシートの縮小も9月に加速する予定だ。前回の引き締め局面と比較しつつ、金融引き締めに伴う影響にFedがどう備えているかを述べる。
◆今回は急いで物価上昇率を抑えなくてはならない局面であることに加え、堅調な労働環境が賃金の上昇を通じた内生的な物価上昇の要因にもなっている。そのためFedにとっては多少労働市場への打撃があるとしても金融引き締めを行いやすい環境であるといえよう。
◆金融引き締めの市場への負の効果として、新興国の債務負担増加やドル調達環境のタイト化が挙げられる。これらに対して、Fedは常設レポファシリティとFIMAレポファシリティという対応策を備えている。ただし、これらの制度は流動性を供給し、危機の悪化を遅らせることは可能だが、支払い能力を改善する施策でないことには注意が必要である。
◆さらにFedは、これまでのところ、バランスシートの縮小ペースを予告対比であえて緩やかにすることで、政策金利の急速な引き上げによる引き締め効果を見極めようとしている可能性がある。予告に従ってバランスシート縮小を進めるのであれば、9月以降減額ペースが速まることになるだろう。金利引き上げだけで物価上昇率が十分に低下しない場合は、バランスシート縮小のペースを速める可能性があることに留意しておくべきだろう。
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