2021年12月16日
サマリー
◆日本銀行は、2021年11月に「地域金融強化のための特別当座預金制度(特別当預制度)」の見直しを行い、付利対象金額の上限を引き下げた。見直しが行われた背景の一つは、地方銀行が資金調達を積極化したことによるコールレートの上昇であると思われる。コロナオペの利用によって当預残高を増やす余地が生まれたことと、特別当預制度で当預残高を大きくすることそのものにメリットが生じたことの2つが相まって、コール市場で資金を取得し、日銀当預に積み上げるという行動につながったと考えられる。
◆コロナオペの利用によりマクロ加算残高の上限値が増えたことは、マイナス付利を受けることなく当預に預け入れることができる残高が増えたことを意味する。つまり、0%より低い金利で資金を調達することができれば、ただ当預に預け入れておくだけで、信用リスクを取らず、0%で運用ができることになる。地方銀行の当預全体に対する付利金利を試算してみると、2019年10月積み期には+0.04%だったが、2021年10月積み期には+0.15%に上昇している 。単純な計算ではあるものの、地方銀行が資金を調達する際に許容できる金利が上がっている可能性がある。
◆金融機関に対するインセンティブをつけた政策が、金融緩和を阻害しないための対策として、当面は付利対象残高上限の引き下げなどで対応可能である。しかし、再び金融機関に対するインセンティブをつけた政策が必要になる場合に備えて、当預残高に紐づいた設計にしない、他の制度との組み合わせも含め、既存の政策を阻害しないか検討するなどの見直しが必要となるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
意見分かれるグロース市場の上場維持基準見直し案
2025年9月に制度要綱が公表予定
2025年07月28日
-
2025年上半期の配当方針等の変更と株価
減益予想が増えるも、累進配当やDOE採用による増配効果が下支え
2025年07月03日
-
CGコードの見直しで会社の現預金保有に焦点
現預金の必要以上の積み増しについて検証・説明責任の明確化を検討
2025年06月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日