2021年07月20日
サマリー
◆日本銀行は7月16日の金融政策決定会合でグリーンオペ(正式名称は、「気候変動対応を支援するための資金供給」)の骨子素案を公表した。オペの基本的な枠組みや条件については、前身となる成長基盤強化オペとは若干の違いがみられる。利率が0%と成長基盤強化オペに比べて引き下げられた一方、オペ利用残高への付利は見送られた。対象先の要件として気候変動対応の開示を求めている点は新しい。
◆資金使途については、①グリーンローン/ボンド、②サステナビリティ・リンク・ローン/ボンド、③トランジション・ファイナンスに関する投融資と、近年発行が進むグリーン関連金融商品を指定する形になった。各商品の市場の成長加速が期待されるほか、低利のバックファイナンスによって、企業による気候変動対応プロジェクトの発掘が期待される。また、債券投資を資金使途に含めたことで、グリーニアムの形成など関連市場の構造的変化につながる可能性がある。
◆日銀のグリーンオペは、主要国中央銀行の間で採用が進むグリーン金融政策の一つとして位置付けられる。グローバルに見ると、折しもECBは戦略見直しの結果を予定より2ヵ月程度前倒しで公表し、金融政策による気候変動対応のロードマップを示したところである。スウェーデンのリクスバンクや英国のイングランド銀行はグリーン金融政策の先行者といえ、年内に気候変動に考慮した社債買入れプログラムを具体化ないしは実行するとしている。これら欧州の中央銀行に比較すると日銀のグリーンオペはより間接的な仕組みを導入したといえる。
◆思考実験的ではあるが、今後、日銀が欧州の中央銀行のような直接的なグリーン金融政策に踏み込むとすれば、設備人材ETF買入れのグリーン化が手段として挙げられる。設備人材ETFの買入れが事実上終了していることに加え、特定の政策テーマと結び付けて買入れ対象を選んでいることや、グリーンオペの前身とされる成長基盤強化オペとの関連も見受けられる。日銀の次なるグリーン金融政策の一手として念頭に置いておいてもよいかもしれない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
CGコードでの上場会社と投資家の注目点は?
CGコードのパブリックコメントの結果から読み解く
2026年08月20日
-
中央銀行の透明性比較と熟議・説明責任の均衡点
ウォーシュ・レビューで読み解く中央銀行コミュニケーションの進化と再検討(下)
2026年08月14日
-
“Never explain, never excuse”から透明性へ
ウォーシュ・レビューで読み解く中央銀行コミュニケーションの進化と再検討(上)
2026年08月14日
最新のレポート・コラム
-
2026年7月全国消費者物価
資源高の影響でエネルギー価格が8カ月ぶりに前年比プラス
2026年08月21日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
2026年7月貿易統計
3カ月連続の貿易赤字 代替調達進む一方、原油輸入価格は高止まり
2026年08月20日
-
「個人向け国債」見直しで家計の行動はどう変わる?:欧州で起きた「家計資金の大移動」からの示唆
2026年08月24日
よく読まれているリサーチレポート
-
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
-
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
-
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
-
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
-
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日

