2021年01月13日
サマリー
米国のリテール金融、特にリテール証券のビジネスモデルを分析すると、「ビジネスモデル=付加価値×儲ける仕組み」という方程式が導き出せる。新たなビジネスモデルは、「付加価値」を追求し続け、「儲ける仕組み」を変革していく中で、創出されてきたといえる。日本では「儲ける仕組み」に注力しがちで、「付加価値」の追求が欠けているといえないだろうか。つまり、いくら事業環境が変化しても、日本のリテール金融の本質的な問題は、プロダクトアウト型の営業とは対極に位置する顧客本位の投資・商品アドバイスが欠けていることであろう。この点、米国の大手証券会社は、投資アドバイスという付加価値を磨き上げてきた。このためロボアドの台頭によるマス市場に対応しても投資アドバイスの付加価値の劣化を回避できよう。規制当局の方針でも、投資アドバイスの強化を証券会社に促すために“顧客を知る”(KYC;Know Your Customer)規制の強化、顧客本位の業務体制の強化が中心である。このような投資アドバイスの質を高める取り組みの差が日米のリテール証券の“顧客からの信頼の度合い”の差となって表れてきていると考えられないだろうか。日本においても、顧客本位の業務体制の規制強化の中で、顧客本位のアドバイスの質の強化の取り組みをさらに本格化させることが必要であろう。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
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