2020年07月21日
サマリー
日本の金融デジタルトランスフォーメーション(金融DX:デジタル化による競争優位を持つビジネスモデルへの変革)は、コロナ禍以前では消費者の利便性の向上を目的に先進的な金融テクノロジーを活用したビジネスモデルを受容するために政府による規制緩和が中心となって進められてきた。しかし、FinTech 企業等は伝統的な金融機関を脅かすような存在にはならず、金融DXは期待されたほど進展していない。コロナ禍後の世界では、特に都市部の移動・行動の制限の影響で、都市部の顧客がオンライン購入を大幅に増やすことで購入行動が構造的に変化し、社会全体のデジタライゼーションのトレンドが強まると期待されている。都市部を拠点とする大手金融機関が、金融DXのロードマップの早期化を中期経営計画に盛り込み始めており、金融DXを主導することへの期待は膨らんでいる。その一方、顧客の行動変化は定着せず、金融DXを阻む構造的な問題だけがクローズアップされるシナリオも考えられる。
新たな金融DXを本格化させるには、関連する当事者が、コロナ禍で想定されるシナリオに左右されず、ビジネスモデルを分解して、コロナ禍で重要性が強調されるデジタルだけではなく、アナログの付加価値を徹底的に見直してビジネスモデルを早期に再構築することが必要であろう。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
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