2018年07月23日
サマリー
本稿は、日本・米国・英国・中国・香港の上場企業の財務諸表のデータを積み上げて、資金配分とキャッシュフローの状況を考察するものである。2007 年度と17 年度を比べると、英国企業以外は、2017 年度の「有価証券投資等」「株主還元」の増加幅が「設備投資」よりも大きかった。企業が設備投資という時間のかかる内部成長から、短期的に結果が出やすいM&Aへとシフトしていることや、潤沢なキャッシュの保有を背景として、株式投資家から配当の支払いを求められていることが要因だろう。このような状況は、短期的な結果を求める投資家に企業が迎合しているかのようにもみえる。
深圳の企業を除けば、フリーキャッシュフローはプラスであることから、「有価証券投資等」を積極的に行いながらも、「営業CF」の範囲内で投資を行っている。同じく、「財務CF」は株式配当金の支払いが大きく、マイナスであるが、借入などの「負債性資金調達」はいずれもプラスである。この状況を考え合わせると、本業で生み出されたキャッシュに加えて、借入や社債を活用しながら、積極的に投資や株主還元を行う企業の姿が浮かび上がる。企業が投資などを行わず、キャッシュをため込んでいるという状況にはないと思われる。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
「少額投資の在り方に関する勉強会」報告書
東証は上場会社、投資家向けの情報発信などを強化
2025年04月28日
-
IR体制の整備の義務化
パブリック・コメントの開始/7月を目途に実施予定
2025年04月23日
-
個人株主の議決権行使比率は高められるか
「飛び道具」は無いため、株主負担の地道な引き下げが重要
2025年03月26日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日