2016年03月03日
サマリー
◆フィンテックの動向が注目される中で、仮想通貨やその決済・取引管理に用いられる分散型台帳の活用が模索されている。同時に、仮想通貨等が有する、①資金洗浄・テロ資金供与規制、②消費者保護、③税制、④資本流出入に対するリスクに関しても認識され、各国当局は規制の整備を進めている。
◆資金洗浄・テロ資金供与規制に関しては、国際レベルでの規制整備に向けた動きが見られ、欧米では既存の規制の対象に仮想通貨を含めるといった対応がとられている。日本に関しては、仮想通貨への規制を含む資金決済法改正案が今国会に提出され、成立を目指すものとされている。
◆ただし、各国の仮想通貨に対する規制の強弱等に関してはまちまちであり、同一国家内の当局間においても対応が分かれる場合もある。仮想通貨の汎用性や、ボーダレスな取引といった特徴を踏まえれば、今後は各国間、同一国家内の当局間における政策協調が必要となろう。
◆金融の安定性と仮想通貨の関係に関しては、中国の動向が注目される。中国では資本規制が導入されていることから、2015年の人民元の減価や株価の下落を背景とした退避資金が仮想通貨へと流入した。中国における仮想通貨の利用の急増によって、利用者が直面する価格変動リスクは増加し、当局による資本規制の実効性にも悪影響を与えるといった懸念が生じている。
◆中国当局も仮想通貨のリスクは認識しており、2016年1月には中国人民銀行による仮想通貨に関する検討会が開催され、管理された仮想通貨の発行の可能性を模索する旨を公表した。取引シェア等を踏まえると、中国における仮想通貨の動向は国際的な仮想通貨の市場にも影響を与えうる。今後の中国当局の動向に注意が必要だろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日