2014年09月08日
サマリー
◆法人企業統計の年次別調査(平成25年度)が公表された。企業業績が堅調であったことから、利益が増加し、企業の資金調達における内部留保(フロー)の割合が増加している。
◆資金需要の増加により、借入れや社債発行による資金調達も増えている。ただし、社債に関しては、国内発行は純減(発行額が償還額を下回る状態)であり、増加の主因は海外発行の増加である。企業の海外展開が進んでいることから、外貨を調達するため、また資金調達手段の多様化を図るため、海外発行が増加しているものとみられる。
◆公募増資は件数・金額ともに増加している。一方、自社株買いに関しては、実施企業数は減少しているものの、いくつかの企業が大きく自社株買いを実施しているため、金額としては増加している。
◆企業の資本構成の変化をみると、長期借入金や社債の総資産に占める割合が増えており、長期資金を確保する動きがみられる。また利益剰余金も増えており、財務基盤の安定化も図られている。企業の内部留保(ストック)は2013年度末時点で328兆円と、前年度比で7.7%増加した。
◆一般的に、企業業績が良くなれば資金需要が増加するが、利益も増加しているのであれば事業活動の原資となる内部留保(フロー)も増える。内部留保は企業にとって使い勝手の良い資金だが、理論的には株主に帰属するものであり、そこには株主資本コストが発生している。現状では資金需要の増加に対して外部調達(借入れや社債発行、増資等)を増やす動きは限定的だが、企業に対しコーポレートガバナンス強化を求める声が強まる中、それぞれの企業が改めて最適な資本構成や資金調達コストについて考える時期にきているのではないだろうか。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
内部留保は何に使われているのか
M&Aなど海外向け投資が大幅増
2015年12月17日
-
混乱しやすい内部留保に関する議論
2013年10月29日
-
拡大する企業の「投資」
企業の投資有価証券に対する支出が堅調、ネットで設備投資を上回る
2014年02月26日
同じカテゴリの最新レポート
-
日銀のETF売却とスチュワードシップ責任
超長期投資家となる日銀のスチュワードシップ責任の果たし方
2025年09月26日
-
日本銀行がETF・J-REITの市場売却を決定
100年以上かけた超長期売却計画には備えが必要
2025年09月22日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日