資本流入と資本規制
~ASEAN主要国のケース~『大和総研調査季報』 2013年秋季号(Vol.12)掲載
2013年12月02日
サマリー
アジア通貨危機以降、ASEAN4の金融資本市場は大きく発展し、資本流入規模も拡大した。アジア通貨危機前、リーマン・ショック前・後で比べると、徐々に資本流入規模が拡大し、リーマン・ショック後が最も多くなった。リーマン・ショック後で最も多いのが証券投資であった。国別ではEUと米国からの株式投資が多かったが、債券投資も一定のシェアを占めている。流入資金の性質では、短期債務よりも長期債務の規模が大きい。
資本流入増加の背景の一つとして、資本取引規制の緩和が挙げられよう。ASEAN4の資本取引規制は国によって特徴は異なるが、おおむね非居住者による証券投資を自由化している。他方で、金融機関への健全性規制によって資本流入への規制を行う傾向にある。
先行き、ASEANは経済共同体創設の一環として資本取引規制の自由化をさらに進める予定である。資本流出入が急激かつ一時的に増加し、当該国の経済運営や金融システムの健全性に問題をもたらす場合、ある程度の規制導入が必要な場合もあろうが、金融セーフティネットを十分に整備することも重要と思われる。
大和総研 調査本部が、その長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、経済、金融資本市場及びそれらを取り巻く制度を含め、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
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