2013年04月04日
サマリー
インフラの新設や更新は、莫大な財政負担を要するものであり、日本だけでなく欧州や米国でもどのようにしてその資金を調達するかは、難しい政治課題となっている。増税や負債による調達が困難な状況の中で、新たな資金の源泉として注目されているのが年金基金だ。OECDなどは、長期の投資期間が見込める年金基金の場合には、時価を管理する必要性は後退し、流動性が低い資産であっても投資対象として考慮できるのではないかという見解をたびたび表明しており、年金基金の積立資産をインフラ等への投資に振り向けるべきであるとしている。
オバマ政権の2期目に入った米国でも、年金基金積立金のインフラ投資への導入支援が政策課題の一つとして浮上してきた(※1)。具体策として地方債による資金調達の容易化などと並んで、特に海外の年金基金による米国内インフラ投資を刺激するための税制改正が検討されていることには、注目すべきであろう。インフラ投資に対して税制上の利益を与えることによって、投資を促進しようとするものであり、投資家側への訴求も強いように思える。
ホワイトハウスのプレスリリースによれば、これまで海外投資家が米国の不動産から得る利得は、海外からの不動産投資に関する課税法(Foreign Investment in Real Property Tax Act、FIRPTA)によって米国内で課税されてきたものを、米国内の年金基金と同様に原則非課税にするという。FIRPTAは、海外投資家から投資阻害要因として指摘されてきたものであるから、今回のオバマ案は海外からの投資促進を目指したものであると言えるだろう。
既にノルウエー政府年金基金は、米国不動産への投資を開始しており、米国の不動産やインフラは海外投資家にとって新たなチャンスと映っているようだ。
米国の新政策に先立って公表された欧州委員会の「欧州経済の長期的金融に関するグリーンペーパー」(Green Paper on the long-term financing of the European economy)(※2)の中でも、年金基金等による長期的投資の対象として、エネルギーや交通・通信などのインフラを例にあげて、投資資金を呼び込むための政策オプションを検討している。海外投資家からの資金導入を競うかのような状況になりつつある中で、実際に税制改正に臨もうとする米国へのインフラ投資を検討する投資家が相次いで現れるかもしれない。
(※1)The White House Office of the Press Secretary “The “Rebuild America Partnership”: The President’s Plan to Encourage Private Investment in America’s Infrastructure” (March 29, 2013)
(※2)European Commission Press release “European Commission launches Green Paper on the long-term financing of the European economy”( 25 March 2013)
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