東日本大震災と地域金融

『大和総研調査季報』 2011年秋季号(vol.4)掲載

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  • 森 祐司

サマリー

東日本大震災による影響は、東北3県に集中しているが、沿岸部と内陸部では被害の様相が全く異なる。沿岸部は津波の影響が大きく、被害額も大きいが、内陸部は地震による被害がほとんどで大きな差異が存在する。東北3県における地域金融、その中核を担う地方銀行、第二地銀、信用金庫等の貸出資産の毀損も、各行庫の営業地盤が異なることから、その被災の度合いも金融機関によって異なっている。

二重債務問題では、既存のスキーム、あるいはその延長線上での対応策をスタートさせている。このため、新制度を導入するよりも早い対応ができるが、規模がいまひとつ小さい印象が否めず、どの程度の効果があるのか懸念する意見もある。二重債務問題への対策の実際の利用状況を見ながら、今後の拡充を考えていく必要が出てくるかもしれない。

被災地の復興には、産業や雇用の拡大が必要であるが、高齢化の進行や産業空洞化の進展などから、過疎化が趨勢的に進み、地域経済の復興は厳しい道のりが予想される。人口減少という現実も踏まえ、「コンパクト」や「集約化」をキーワードとした復興計画が重要で、そのために地域金融は有効なアイデアでサポートしていくことが必要なように考えられる。

大和総研調査季報 2024年春季号Vol.54

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