上場会社数の減少が続く国内証券取引所

再考される上場メリット、海外証券取引所との提携強化により空洞化防止を

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サマリー

◆国内証券取引所の上場会社数は、上場廃止会社数新規上場会社数を上回る状態が続き、2007年をピークに減少を続けている。企業が上場を廃止する理由は、企業組織再編に伴うもの(他社との合併や子会社化)が最も多い。近年、MBO等により自主的に非上場化を選択する企業も増加している。これまでMBO後に再上場を果たした企業は本稿執筆時点でわずか2社であり、MBO実施時は再上場を目指していた企業も、再上場を断念しの事業会社の傘下に入るケースがみられる。

◆上場会社数減少の背景として考えられるのは、株式相場の低迷により株式市場から調達できる資金の額が不透明であるのに対し、上場コストが増加傾向にあることである。長期的に続く低金利により、借入や社債発行による資金調達コストは低水準であり、株式市場以外からの資金調達が容易であることも一因である。

◆2011年は日本企業が台湾や香港の証券取引所に預託証券を初めて上場させるなど、海外の証券取引所を活用した資金調達がみられた。海外の証券取引所に上場するコストを考えると、既に国内証券取引所に上場している企業が海外証券取引所に急速にシフトするとは考えがたいが、未上場でこれから上場を目指す企業が海外証券取引所に流出していく可能性は高い。

◆国内証券取引所も上場会社を増やそうと様々な試みを行っているが、企業の海外進出に伴い、進出先にある証券取引所への上場を検討する企業は今後増加するであろう。国内投資家のことを考えれば国内証券取引所への上場も維持されるような対策が求められ、その手段の1つとしては国内証券取引所が海外証券取引所との提携を強化することにより「上場会社に対しては海外証券取引所で資金調達を行う際のサポートをする」という対策も考えられよう。

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