2011年12月27日
サマリー
◆国内証券取引所の上場会社数は、上場廃止会社数新規上場会社数を上回る状態が続き、2007年をピークに減少を続けている。企業が上場を廃止する理由は、企業組織再編に伴うもの(他社との合併や子会社化)が最も多い。近年、MBO等により自主的に非上場化を選択する企業も増加している。これまでMBO後に再上場を果たした企業は本稿執筆時点でわずか2社であり、MBO実施時は再上場を目指していた企業も、再上場を断念しの事業会社の傘下に入るケースがみられる。
◆上場会社数減少の背景として考えられるのは、株式相場の低迷により株式市場から調達できる資金の額が不透明であるのに対し、上場コストが増加傾向にあることである。長期的に続く低金利により、借入や社債発行による資金調達コストは低水準であり、株式市場以外からの資金調達が容易であることも一因である。
◆2011年は日本企業が台湾や香港の証券取引所に預託証券を初めて上場させるなど、海外の証券取引所を活用した資金調達がみられた。海外の証券取引所に上場するコストを考えると、既に国内証券取引所に上場している企業が海外証券取引所に急速にシフトするとは考えがたいが、未上場でこれから上場を目指す企業が海外証券取引所に流出していく可能性は高い。
◆国内証券取引所も上場会社を増やそうと様々な試みを行っているが、企業の海外進出に伴い、進出先にある証券取引所への上場を検討する企業は今後増加するであろう。国内投資家のことを考えれば国内証券取引所への上場も維持されるような対策が求められ、その手段の1つとしては国内証券取引所が海外証券取引所との提携を強化することにより「上場会社に対しては海外証券取引所で資金調達を行う際のサポートをする」という対策も考えられよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
成長と新陳代謝を促進するグロース市場改革
スタンダード市場への影響も注視
2025年05月12日
-
「少額投資の在り方に関する勉強会」報告書
東証は上場会社、投資家向けの情報発信などを強化
2025年04月28日
-
IR体制の整備の義務化
パブリック・コメントの開始/7月を目途に実施予定
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日