米国地域金融機関の再編と合併事例にみる効果

『大和総研調査季報』2022年夏季号(Vol.47)掲載

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サマリー

米国の商業銀行数は、統合によりこの20 年で半減している。その中で、2018 年のドッド・フランク法改正で厳格な規制や監督の対象の基準が引き上げられて中堅規模の銀行のM&Aが行いやすくなったこともあり、上場地域金融機関の中ではM&A等も活用して資産規模を拡大させているところもある。

近年の事例は、①既存エリアでのシェア上昇を企図した「ドミナント強化型」、②人口増加率が高く、企業が集積する未進出地域へのアクセスを図る「エリア拡大型」、③保険や富裕層向け資産管理ビジネス等、伝統的な資金利益以外の収益確保を狙う「事業強化型」の3つに分類でき、比較的案件規模の大きい事例ではドミナント強化型が半数を占めている。

買収先企業の人材を削減する印象が米国企業には強いが、ドミナント強化型の事例では、人員削減よりも人材の引き留めや配置転換のための教育・訓練機会を提供している。また、統合の効果では、支店数削減などのコスト削減だけでなく、互いの強みのある商品・サービスを相手の顧客に提供する等のシナジー効果への期待も大きい。円滑なシステム統合の実行力を含め、「1+1>2」となるような取り組みが合併後の成長のカギを握っている。

大和総研調査季報 2024年春季号Vol.54

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