PUE(Power Usage Effectiveness:電力使用効率)は、データセンター設備のエネルギー効率を表す指標で、2007年、米国のデータセンターの省エネ化を推進する業界団体The Green Grid(グリーン・グリッド)が発表した。ICTを利活用すると、ヒトやモノの移動頻度の減少、移動の効率化・高速化などが実現され(例えばICTによる物流・在庫管理、オンラインショッピング、ITS(※1)など)、社会の省エネ化が進むことが期待されるが、一方でデータセンター自体のエネルギー消費量が増すことで、結果的にCO2排出量が増加してしまうといった問題をもたらす可能性があることが背景にある。
PUEは、データセンター全体の消費電力量をICT機器の消費電力量で割ることで求められる(図表1)。値が小さいほど、データセンターの設備に使われる電力が少ない、つまり電力効率が良いことを示す。
![図表1 PUEの計算例](/common/img/report/20140527_008561.png)
一般的なデータセンターのPUEは2.0~3.0であるが、最近の省エネに配慮したデータセンターの中には1.2~1.8といった値を発表しているところもある。グリーン・グリッドでは、PUEの解説、測定方法、公開方法などを取りまとめた総括(※2)を公開しており、PUE採用に関する標準化や利便性向上を図っている。また、PUEの透明性を高めるために、PUEレポートの登録制度、レポート閲覧ポータル、第三者による認定プログラムを整備している(※3)。
PUEは総合的な指標であり、その変化の原因は、より詳細な調査によって明らかにしなければならない点に留意する必要がある。例えば、データセンター設備の消費電力量が100、ICT機器のそれが100の場合、PUE=2.0となるが、仮想化(※4)などの技術の導入によりICT機器の消費電力量を10削減できたとすると、データセンター設備の消費電力量が変わらなければ、PUE≒2.1となってしまい、省エネ化が逆にPUEの数値を悪くしているように見えてしまう。グリーン・グリッドではこのような場合、改善の機会と考えよ、としている。つまり、仮想化の導入によってICT機器の消費電力量が減ったのだから、その分、空調なりUPSなり、データセンター設備の消費電力を改善できる余地が生まれている可能性がある、と解釈できるということだ。
このように、PUEを採用したデータセンターは、常に改善を意識する必要がある。ある時系列の一時点でPUEの数値が良いことだけではなく、PUEを継続的に監視して、必要に応じて施設を見直し、改善することで、最終的にデータセンター全体の消費エネルギーを減らすことが目的であると認識する点が重要となる。
(※1)Intelligent Transport Systems 高度道路交通システム
(※2)The Green Grid「WP#49-PUE指標に関する総括」2007~2013年までにグリーン・グリッドより発行された全てのPUE関連資料を取りまとめ、新しい情報を加えて統合したもの。
(※3)報告されたレポートは、グリーン・グリッドの定めるPUE測定方法に従っているかなどの観点から、未認定(Unrecognized)、報告(Reported)、登録(Registered)、認定(Certified)の4つのカテゴリに分類される。「認定」が第三者評価を加味した最も厳格なレポート要件となっており、「登録」「認定」であればグリーン・グリッドのウェブサイト上にレポートが公開される。
(※4)ハイパーバイザーと呼ばれるソフトウェアを用いてICT機器の物理特性を論理的に隠蔽する技術で、1台のICT機器を複数台に見せたり、複数台のICT機器を1台に見せたりできる。仮想化の導入によって、それまでよりもICT機器を効率的に使用できるようになることが期待される。
(2014年5月27日掲載)
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