GHGプロトコルは、温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)排出量の算定と報告の基準のことである。この基準を作成したのは、GHGプロトコルイニシアチブといい、WRI(World Resources Institute:世界資源研究所(※1))とWBCSD(World Business Council for Sustainable Development:持続可能な開発のための世界経済人会議(※2))を中心にして、企業、政府機関、NGO等も参加している国際的な組織である。GHGプロトコルイニシアチブの目的は、国際的に認められたGHG排出量の算定と報告の基準を開発し、利用の促進を図ることである。
今までに、以下のような基準を公開している。
・Corporate Accounting and Reporting Standards (Corporate Standard):主に企業自身からのGHG排出量を対象とする
・Product Life Cycle Accounting and Reporting Standard:製品のライフサイクルにおけるGHG排出量を対象とする
・Corporate Value Chain (Scope 3) Accounting and Reporting Standard(以下、Scope3基準):上流から下流までバリューチェーン全体のGHG排出量を対象とする
Corporate Standardは、以下のような世界的なガイドラインから参照されており、GHG排出量報告のデファクトスタンダードになっている。
・グローバルレポーティングイニシアチブ(GRI):多くの企業が使っているCSR報告ガイドライン
・カーボンディスクロージャープロジェクト(CDP):世界の企業にGHG排出量開示を求めている投資家の団体
・ISO 26000:組織の社会的責任のガイダンス
2011年10月に公開されたScope3基準は、企業が直接コントロールできない、上流の取引先や下流の顧客でのGHG排出量も対象としており、算定・報告を行う企業の実務的な負荷が高くなるとされる。このため日本の環境省と経済産業省では、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等に関する調査・研究会(※3)」を通じて、算定・報告作業の負荷軽減を支援する業種別算定ガイドライン等を作成し、公開している。
(※1)米国の天然資源・環境問題に関する研究・政策提言を行うシンクタンク
(※2)持続可能な発展を共通理念とする経済界の集まり
(※3)サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等に関する調査・研究会
(2012年10月31日掲載)
(2013年3月29日更新)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日