CDPは、世界各国の機関投資家によるイニシアチブで、2003年より企業の気候変動問題への取り組みや、温室効果ガスの排出量の測定や管理などについて広範な調査を行い、その結果を公表している。また、近年では気候変動情報に加え、水や森林など自然資本の領域に活動範囲を広げている。これまでは、正式名称を“Carbon Disclosure Project”(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)としていたが、活動領域の拡大により2013年からはCDPを正式名称とした。
2013年11月に公表された「CDP ジャパン500 気候変動レポート2013」によると、CDPの署名機関は年々増加しており、調査を開始した2003年の署名機関は35機関であったのが、2013年2月1日時点では722機関にまで増え、その運用資産額は87兆ドルに達している。地域別の署名機関は、北欧・西欧が294、北米が174となっており、これら欧米で全体の65%を占めている。また、タイプ別ではアセット・マネジャーが247、年金基金が167、銀行が160などとなっている。
CDPによる気候変動問題に関する調査対象企業は、世界の大手企業500社(Global 500)をはじめ、各地域の大手企業や各産業セクターの代表企業などに年々拡大している。直近では、約5,000社を対象に質問書を送付し、その回答をもとに企業の気候変動問題への対応をディスクロージャースコアとパフォーマンススコアの2種のスコアで評価している。また、2006年から日本企業を対象とした調査が開始され、ジャパン500として結果が公表されている。
ディスクロージャースコアは、CDPからの質問書に対する企業の回答内容の充実度を評価するもので、最大を100点としてスコアリングされている。上記レポートで、「高いディスクロージャースコアは、質問書に対する適切な情報開示を示すものであり、内部情報管理や事業に関連する気候変動問題に対するリスクや機会についての理解が深いことが高評価につながる」とされている。また、スコアが特に優れている企業をクライメート・ディスクロージャー・リーダーシップ・インデックス(CDLI)に選定している。
パフォーマンススコアは、気候変動に対して望ましい対策をとっているかを評価したもので、その根拠となる十分な情報開示を必要とするためにディスクロージャースコアが50点以上の企業を対象としてスコアリングされている。各企業のスコアは、Aを最上位として、A、A-、B、C、D、Eの6つのバンドで公表されている。また、スコアが高く、温室効果ガスの排出量やその削減などについて優れている企業をクライメート・パフォーマンス・リーダーシップ・インデックス(CPLI)に選定している。
CDPは、2011年から企業だけでなく自治体を対象とした気候変動と水に関する調査も行っており、日本は東京都や横浜市などが対象となっている。また、2010年から世界の企業に水の管理や水利用データなどの水に関する質問書を送り、その回答を分析し公表している。森林についても、2013年より森林破壊の直接的、間接的な要因となる木材やパーム油などに関連する商品に関する質問書を世界の企業に送り、その回答を分析し公表している。
(2012年11月30日掲載)
(2013年12月12日更新)
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