1992年に開催された国連環境開発会議(地球サミット)では、先進各国が環境保全を重視する一方で、貧困問題などに苦しむ開発途上国からは、開発の権利や技術移転・資金供与の重要性などが強く訴えられた。さまざまな対立点について議論が深められた結果、21世紀に向けての国家と個人の行動原則である「環境と開発に関するリオ宣言(リオ宣言)」(※1)が採択されたが、その中で「現在の地球環境の悪化を引き起こしたのは、主として先進国の社会経済活動によるところが大きいが、限りある地球の一員として、開発途上国も持続可能な開発を実現し地球環境を保全していく責任があるという考え方(※2)」が示されている。
共通だが差異ある責任という考え方は、地球サミットから20年後にあたる2012年に開催された国連持続可能な開発会議(リオ+20)でも踏襲されている。同会議の成果文書として公表された「The future we want」(※3)では、第15パラグラフにおいて、リオ宣言の原則を再確認することが示されている。しかし、かつての開発途上国の中に急速な経済成長を遂げている国々がみられる一方、景気後退や財政問題に苦しむ先進国も多く、20年前の枠組みをそのまま維持していけるとは限らない。開発途上国と先進国という二分法的な区分の意義が薄くなっているとすれば、環境保全と経済成長の両立に向け、各国が自らの責任を自覚して、最大限の努力を積み重ねていくことが重要であろう。
(※1)「環境と開発に関するリオ宣言」環境省
(※2)「平成5年版環境白書:第3章第3節=地球サミットの成果と今後の実行」環境省
(※3)「The future we want」リオ+20事務局
(2012年10月1日掲載)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日