国際監査・保証基準審議会の「監査報告書の改訂(長文化)」に見る監査およびガバナンスの本質的な課題
~ユーザー重視の監査基準と資本市場の信頼性向上に向けて~『大和総研調査季報』 2016年4月春季号(Vol.22)掲載
2016年06月01日
サマリー
ユーザー(=利用者)をより重視した監査基準を目指す国際監査基準の設定主体である国際監査・保証基準審議会(IAASB)は「監査報告書の改訂(=監査報告書の長文化)」基準を、2014 年9月に承認した。この背景には、エンロン事件から現在に至るまで世界各国で生じた度重なる会計不正、不適切会計等による財務諸表の信頼性を損なう事案において、ユーザーの監査の透明性を向上させることへの強い要望があった。
2000 年初頭の国際監査基準設定の背景には、グローバルなリンケージが強まる各国の資本市場において、「ユーザーの保護」が1国の監査基準のみでは解決が困難であるという事情があった。さらに、資本市場の信頼のコアとなる財務諸表の監査人、作成者(=経営者)、アナリスト等の財務諸表のサプライチェーンに関連する当事者の役割と責任を再度認識し、その課題を解決していくことの重要性を再確認したこともあった。
このような背景を踏まえると、今回の監査報告書の“ 長文化” 自体は評価できるが、不正および虚偽記載の発見機能としての監査自体の“ 付加価値” がどのように高められるのか、その真価が問われていると言えよう。
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