地球温暖化対策の経済効率的なシナリオ

CO2削減の鍵を握るCCSと森林吸収

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2015年03月06日

  • 大澤 秀一

サマリー

◆地球温暖化の進行が自然災害などの大きな経済損失に結び付いていると考えられている。現政策のままで地球温暖化が進んだ場合、世界平均地上気温が約2℃上昇することが予測される2050年頃の経済損失(割引前)は272~4,516十億ドルと推計される。将来損失額には大きな幅があるが、この範囲よりも大きくなる可能性が高い上、この規模の経済損失が毎年繰り返し発生すれば、社会経済に大きな影響を与えることになるであろう。


◆地球温暖化を抑制して経済損失を未然に防ぐ根本的な解決策は温室効果ガス(GHG)排出削減策である。2℃目標を実現するために早期から経済効率的シナリオを実行すれば、世界経済に大きな影響を与えないことが示されている。経済損失の増加傾向と規模拡大を考慮すれば、現政策のままで自然災害と経済損失を受け入れるよりも、安定した社会経済を目指して温暖化対策に取り組むことの方が賢明な選択と考えられる。


◆2℃目標のためのシナリオの実現には課題も多い。限界削減費用の低い排出削減を進めるだけでは目標達成は難しいと考えられており、より大きな削減ポテンシャルを持つ二酸化炭素回収貯留技術(CCS)や大規模植林などの二酸化炭素除去技術(CDR)の利用が不可欠であることが示されている。これらCDRを含めた排出削減技術の利用が経済的価値を生むような市場ベースの仕組みが必要と考えられる。2015年末には、京都議定書に続く将来枠組みを決めるための国連気候変動枠組条約(UNFCCC)締約国会議(COP21)の開催が予定されている。新たな枠組みの実効性を確保するためにも具体的な解決策等が盛り込まれることに期待したい。

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