2013年07月19日
サマリー
環境省では、平成25年4月上旬~6月中旬に地方公共団体が実施した水浴場水質調査の結果を取りまとめており、先ごろ、その結果が公表された(※1)。この調査では、全国832の海水浴場や湖沼・河川の水浴場について、ふん便性大腸菌群数、油膜の有無、COD(化学的酸素要求量)、透明度等を調査しており(※2)、以下の基準によって各水浴場の水質を判定している。取りまとめ結果によれば、「適」にランクされる水質AAと水質Aの合計は全国で687箇所となり、調査対象全体の82.6%を占めている。

(出所)環境省資料より大和総研作成
水質調査結果の推移をみると、水質Aの水浴場が減少し、水質AAに判定される水浴場が増加していることがわかる。水質AAの水浴場の比率は、平成10年度の42.1%(353箇所)から、平成25年度には66.8%に上昇している。各地で河川をきれいにする取り組みなどが進められており、こうした努力が水浴場の水質改善に結びついているものと考えられる(※3)。一方、水質Bと水質Cを合わせた「可」の比率は、2割弱程度の水準が続いており、水質の改善が難しい地域もあることがうかがえる。

内海や内湾、湖沼などの閉鎖性水域では、水の出入りが少ないため、一般に汚濁物質が蓄積されやすい。また、都市部周辺では、自然が持つ浄化能力を上回る量の汚水が排出されることなどにより、水質の改善が難しくなっている可能性もある。東京周辺や愛知、大阪などの都市部では、水質Bの水浴場が占める比率は、全国平均を上回っている。東京で調査対象となっている8箇所の水浴場は、大島、新島などの島嶼部にあるため、すべてが水質AAとなっているが、東京湾内で東京に近い神奈川(海の公園)や千葉(いなげの浜)の水浴場はいずれも水質Bとなっており、東京湾奥部の水質状況も厳しいものと考えられる(※4)。

(出所)環境省資料より大和総研作成
とはいえ、日本は本来、水が豊かな国であり、美しい水辺や清流を残す地域も多数あるものと思われる。環境省では、年間利用人数が概ね1万人以上(※5)の水浴場の中から、全国 100箇所の水浴場を、「快水浴場(かいすいよくじょう)百選(※6)」として選定している。この選定は、①美しい水辺(水質、自然景観)、②清らかな水辺(環境への配慮・取り組み)、③安らげる水辺(安全性)、④優しい水辺(利便性)⑤豊かな水辺(水と人との関わり)の五つの評価軸に基づいて行われている。また、「名水百選(※7)」や「平成の名水百選(※8)」も選定されており、水質や水環境保全等に優れた湧水や河川などが紹介されている。前述の水質調査結果でも、調査対象を個別にみると、年間利用人数は数千人規模ながら、水質AAの水浴場が各地にあることがわかる(※9)。今年の夏は、都会の暑さや喧騒を離れ、涼しく静かな水辺を訪れてみるのも良いかもしれない。
(※1)「水浴場水質調査結果について(お知らせ)」(平成25年7月1日:報道発表資料)環境省
(※2)水素イオン濃度(pH)、病原性大腸菌O-157についても参考項目として調査しており、O-157は調査した655の水浴場では検出されなかった。
(※3)「平成23年全国一級河川の水質現況の公表について」(平成24年7月31日:報道発表資料)国土交通省
(※4)「閉鎖性海域ネット」環境省
(※5)島の海水浴場は概ね2千人以上、 湖沼・河川の水浴場は概ね5千人以上
(※6)「快水浴場百選」環境省
(※7)「環境省認定 名水百選(昭和60年選定)」環境省
(※8)「平成の名水百選」環境省
(※9)水浴場の水質調査結果:平成25年「水浴場水質調査結果(冊子版)」環境省
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