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日本の大気中の二酸化炭素濃度が400ppmvを突破

2013年06月07日

大澤 秀一

サマリー

気象庁は、大気汚染の直接的な影響を受ける可能性がきわめて低い南鳥島(東京都小笠原村)で、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の4月の平均値が観測開始以降、初めて400ppmv(※1)を超えたことを発表した(※2)。これで、国内に3か所ある気象庁の観測地点すべてで400ppmvを超えたことになる。CO2濃度は地球温暖化の進行度を示す代表的な指標であり、その濃度変化には多くの人々が関心を寄せている。


気象庁は、綾里(りょうり)(岩手県大船渡市、北緯39.0度)、南鳥島(北緯24.3度)、与那国島(沖縄県八重山郡、北緯24.5度)の3地点で、大気中のCO2濃度を連続観測している。2012年2月、もっとも緯度が高く、都市部などの局地的な汚染源による影響を大きく受けない綾里において月平均値が初めて400ppmvを超えた。2013年1月には、西風の出現頻度がほとんどないため、汚染源が集中する西方からの影響をほとんど受けない与那国島でも400.7ppmvを観測し、次いで4月に南鳥島で400.5ppmvを観測した。綾里と与那国島の今年4月の月平均値は、それぞれ404.8ppmv、403.5ppmvとなったことで、3地点すべてで400ppmvを超え、観測開始以降の最高濃度を記録した。


図表1は3地点で観測されたCO2濃度の月平均値の変化を表したキーリング曲線である。観測開始以降、季節変化を繰り返しながら一貫して上昇トレンドが継続してきたことがわかる。季節変化は植物の呼吸などによって引き起こされ、冬にCO2の吸収が減る影響が表れる春先にCO2濃度が最も高くなる(※3)

図表1 日本の大気中二酸化炭素の月平均値の濃度変化

図表1 日本の大気中二酸化炭素の月平均値の濃度変化

(出所)気象庁ウェブサイトより大和総研作成


日本以外でも400ppmvを超えるCO2濃度の観測が相次いで報告されている。海外で初めて月平均値が400ppmvを超えたのは、2012年4月、北極圏にある米国・バロー(北緯71.3度)とカナダ・アラート(北緯82.5度)であった。2013年に入ってからは、1月にノルウェー・ニーオルスン(北緯78.9度)で観測された。1日間だけの日平均値だと、2013年4月30日にスペイン・イザナ(北緯28.3度)で、5月9日に米国のマウナ・ロア(北緯19.5度)でも400ppmv超のCO2濃度が観測された(※4)


CO2濃度が増加している原因は、主として人間による化石燃料の燃焼による排出及び土地利用変化(主に森林伐採)なので、これらの影響が大きい北半球ではCO2濃度が高くなる傾向がある。また、北極圏で高いCO2濃度が観測されるのは、排出されたCO2が対流等で輸送される結果である。大気は地球全体を対流しているため、近いうちに南半球でも月平均値や日平均値が400ppmvを超えることが予想される。CO2濃度は、ここ10年間、毎年2ppmv程度増加してきた。このまま推移すれば、年平均値が400ppmvを超えるのは国内では2015年頃、世界全体では2016年頃になると予想され、産業革命以前(約280ppm(※5、ppmvと同意)から約43%増加することになる。

図表2 400ppmv超の二酸化炭素濃度を観測した代表的な地点
図表2 400ppmv超の二酸化炭素濃度を観測した代表的な地点

(出所)三角形「白地図、世界地図、日本地図が無料【白地図専門店】」より大和総研作成


ほぼすべての国・地域が締結している国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の締約国は、産業革命以降の気温上昇について、地球温暖化の深刻な影響が出る一歩手前、もしくは最小限に抑えられる2.0℃未満にすることを目指している。気温上昇とCO2濃度や排出量等との関係を評価したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告書(※6では、図表3のカテゴリーⅠに示される範囲にCO2の排出をとどめることで、気温上昇を抑えるシナリオが描かれている。すなわち、CO2安定化濃度の目標を350~400ppm(ppmvと同意)に定め、2015年までにCO2排出がその範囲でピークを迎え、その後、減少に転じて2050年には85~50%削減(2000年比)が達成されれば、産業革命以降の気温上昇が2.0~2.4℃に収まるというシナリオである。このシナリオは、日本や欧州連合などの排出削減義務を持つ国・地域の地球温暖化対策の基本法や基本的施策等を規定する際の根拠にもなっている。

図表3 気温上昇とCO2濃度および排出量との関係
図表3 気温上昇とCO2濃度および排出量との関係

(注)ppmはppmvと同意。


(出所)「IPCC第4次評価報告書第3作業部会報告書政策決定者向け要約」より大和総研作成


しかし、現実には各国の事情や、削減義務を持たない途上国等からの排出増などによって想定通りには進んでいない。今回、400ppmvを超えるCO2濃度が観測されたことは象徴的なシグナルといえよう。現在、各国が誓約している削減目標(2020年)をすべての国が達成しても、シナリオとの間には80~130億トンに上る「ギガトン・ギャップ」(※7が存在することが課題として取り上げられることも多い。このままでは、CO2排出が2015年までにピークを迎えることも、CO2安定化濃度が400ppm(ppmvと同意)を下回ることも難しい状況にある。


今回の観測結果に対して日本政府から声明はないが、マウナ・ロアの観測結果を受けて、気候変動枠組条約事務局長のクリスティアナ・フィゲレス氏は、「人類は歴史的な境界を超え、新たな危険領域に入った。地球温暖化が引き起こす様々な悪影響を再認識して、目を覚まさなければならない」との声明を発表した(※8。国際社会は、気温上昇を2℃未満に抑えるための努力を続けなければならない。これまでにも繰り返し説かれてきたことだが、今後、20~30年間の削減努力と投資が、より低いCO2安定化濃度の実現可能性を高めることになり、排出削減が遅れれば、より厳しい気候変動の影響を受けるリスクが増すことになる。


(※1)ppmv(parts per million by volume)は体積百万分率で、乾燥した空気分子100万個中の当該ガスの分子数のこと。慣例としてppmと表現することもある。
(※2)気象庁ウェブサイト
(※3)気象庁ウェブサイト
(※4)米国海洋大気庁地球システム研究所ウェブサイト
(※5気象庁「気候変動に関する政府間パネル第4次評価報告書第1作業部会報告書政策決定者向け要約
(※6IPCC第4次評価報告書第3作業部会報告書政策決定者向け要約
(※7国連環境計画ウェブサイト
(※8UNFCCCウェブサイト


 

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