2013年03月15日
サマリー
多様な人材を活用することで経済社会の活性化を図ることや、少子高齢化による労働力人口の減少懸念に向けて労働供給の量的拡大を図ることなどから、産官学のさまざまな分野で女性の活躍が推進されている。科学技術の分野でも、多様な視点や発想を取り入れた研究活動を活性化するために、女性研究者の活躍が期待されている。そのためには、女性研究者の人材プールを構成する大学や大学院における女子学生を増やすことが必要であろう。そこで、「学校基本調査(※1)」から、男女別学生数の動向を検討してみた。
図表1が、大学の学部や大学院に在籍する男女別の学生数と、学生全体に対する女子学生の占める割合(女子学生比率)について、平成元年度から平成24年度までの推移を図示したものである。直近の平成24年度では、男子学生は前年度比-1.4%の167万人、女子学生は前年度比+0.5%の120万6千人であった。男子学生が減少しているのに対し、女子学生は増加していることから、女子学生比率は前年度から0.5%ポイント増の41.9%となった。
次に、平成元年度からの推移をみると、男子学生数は平成7年度頃までは増加していたが、その後はほぼ横ばいとなり、最近では緩やかな減少傾向がみられる。一方、女子学生数は平成元年度からほぼ増加が続いていており、平成24年度の男子学生数は平成元年度の1.1倍であるのに対し、女子学生数は2.2倍と大幅な増加を示している。特に、大学院での女子学生の増加が著しく、平成24年度は平成元年度の6.2倍にまで増えているが、もともと大学院での女子学生比率は学部より低いため、平成24年度でも30.6%にとどまっている。
図表2が、平成24年度時点での大学の学部、大学院修士課程、大学院博士課程における専攻分野別の女子学生比率を図示したものである。学部と大学院のいずれでも人文科学と教育は女子学生が半数を超え、学部では薬学で女子学生が半数を超えているのに対し、農学や医・歯学では女子学生比率が30%から45%程度の水準となっている。さらに、理学は女子学生比率が20%程度、工学は10%程度と非常に低く、専攻分野によって女子学生比率が大きく異なっている。ただし、同じ専攻分野でも学科によって差もある。理学全体では学部と大学院を合わせた女子学生比率は25.0%となっているが、物理学は12.9%であるのに対し生物学は39.5%と比較的高い。また、工学全体では女子学生比率は11.7%となっているが、応用化学は20.3%、繊維工学は20.4%であるのに対し、機械工学は3.4%、電気通信工学は6.7%と非常に低い水準にとどまっている。
2013年2月26日に掲載したコラム「科学技術分野における女性研究者の動向」(※2)では、理系分野での女性研究者の比率が低いという結果を示したが、研究者の人材プールとなる学部や大学院での女子学生比率の低いことが大きく影響していよう。したがって、理系分野での女性研究者の活躍を推進するには、大学における理系の女子学生を増やすことが必要であり、そのためには初等中等教育における理系分野への進路選択を支援する対策が求められよう。
また、ここで示した女子学生比率には留学生も含まれている。大学院の学生について理学の女子学生比率を算出すると20.4%であるが、外国人学生の女子学生比率は35.0%と比較的高いため、外国人学生を除くと女子学生比率は19.2%に低下する。また、女子学生比率が最も低い工学では、大学院での女子学生比率は11.5%であるが、外国人学生の女子学生比率は29.0%となっているため、外国人学生を除くと女子学生比率は9.2%となる。日本人に限定すると、女子学生比率はより低いのである。多様な視点などを取り入れることで日本の科学技術分野での研究活動を活性化するには、理系女子学生を増やすための対策とともに、留学生が日本において研究活動を行うことを支援するような対策も必要なのかもしれない。
(※1)文部科学省「学校基本調査」
(※2)「科学技術分野における女性研究者の動向」(2013年2月26日付大和総研コラム)
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