2012年10月05日
サマリー
2012年10月1日、環境税として「地球温暖化対策のための税(地球温暖化対策税)」が導入された(※1)。
今回導入された「地球温暖化対策税」は、2012年7月1日に始まった「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」や、現在検討されている「国内排出量取引制度」(※2)と合わせて、地球温暖化対策の主要3施策と政府が呼んでいるものの一つである(※3)。複数の施策をパッケージ化することで、相乗効果の創出が期待されている(図表1)。
図表1 地球温暖化対策の主要3施策

(出所)環境省資料より大和総研作成
環境税が導入された背景には、地球温暖化防止のための温室効果ガス(GHG(※4))の削減は、我が国のみならず地球規模の重要かつ喫緊の課題であり、2050年までに80%のGHG排出削減を目指していることがある(※5)。また、GHG排出削減の手段として、欧州諸国では1990年代以降、化石燃料などのCO2排出源に対する課税を強化し、その財源を活用した環境技術開発投資、省エネ設備導入などを行う施策や、価格メカニズムを通じたCO2の排出削減が進められていることなどがある。
地球温暖化対策税は、平成24年度税制改正で創設された「地球温暖化対策のための課税の特例」により、全化石燃料を課税ベースとする現行の石油石炭税に上乗せして徴税される。上乗せ税率は化石燃料ごとの税負担がCO2排出量1トン当たり289円に等しくなるよう、単位量(キロリットルまたはトン)当たりの税率を設定している。例えば、原油1キロリットルからは2.62トンのCO2が排出される換算なので760円が上乗せされる。徴税は急激な税負担とならないよう、3年半かけて3段階に分けて実施される(図表2)。
図表2 化石燃料の地球温暖化対策税

(出所)環境省資料から大和総研作成
地球温暖化対策税の納税義務者は化石燃料の採取者または保税地域からの引取者(輸入者)で、上乗せ税率を販売先に転嫁するか否かはそれぞれ事業者の判断に任されている。仮に上乗せ税率を最終消費者に転嫁すると仮定した場合の追加的な家計負担は、現在のエネルギー使用量などをベースに試算すると、平均的な世帯で2016年4月以降に月100円程度、年1,200円程度と見込まれている(図表3)。
図表3 地球温暖化対策税が家計に与える影響(2016年4月以降)

(出所)環境省資料から大和総研作成
政府試算によれば、今回、上乗せされる分の税収は2016年度以降で約2,600億円と見込まれている(※1)。一般会計に計上された上でエネルギー対策特別会計に繰り入れられ、エネルギー需給構造高度化対策における新エネルギー対策、省エネルギー対策、石炭・天然ガスの高度利用、エネルギー起源CO2削減への取り組み等の事業に使われることになっている。2013年度の概算要求 を見ると、これらの事業としてクリーンエネルギー自動車の国内市場の確立を図るための車両や充電設備等に対する補助、風力発電に適しているが送電網が脆弱な地域における送電網の整備、ゼロエミッション石炭火力発電のための酸素吹石炭ガス化複合発電の実証実験の実施等が挙げられている。
納税者の関心は、家計負担や税の公平性、使途とともに、CO2の削減量にも向いている。民間研究機関の試算を基にした環境省の発表資料によれば、2020年に1990年比で約0.5%~2.2%(約600万トン~約2,400万トン)が見込まれている(※1)。燃料価格が上昇することで消費が抑制される価格効果(0.2%)と、税収を活用して温暖化対策事業に活用することによる二酸化炭素の排出削減(財源効果、0.4%~2.1%)を合わせたものである。国会等において価格効果が小さすぎるとの意見があった経緯もあり(※7)、今後の具体的な検証が必要であろう。
環境分野では、近年、このように複数の施策や政策を組み合わせることで、費用対効果の高い成果の実現を目指す“ポリシーミックス”の活用が推奨されている(※8)。今後、排出削減効果を具体的に検証していくには、最初に述べた主要3政策のパッケージによって達成される気候変動を定量評価していくことになろう。
(※1)環境省ウェブサイト「地球温暖化対策のための税の導入」
(※2)環境省地球温暖化対策課市場メカニズム室「国内排出権取引制度について」 平成24年9月
(※3)内閣提出の地球温暖化対策基本法(衆議院で閉会中審査(継続審議)中)。
(※4)GHG: Greenhouse Gas
(※5)環境省 第四次「環境基本計画」 平成24年4月27日
(※6)経済産業省「平成25年度 資源・エネルギー関連概算要求の概要」 平成24年9月
(※7)菅総理大臣の答弁(衆議院本会議録第4号(平成23年2月25日))や、池田経済産業副大臣の答弁(衆議院財務金融委員会議録第7号(平成23年3月9日))。
(※8) 経済協力開発機構(OECD)による“OECD Environmental Performance Reviews: Japan 2010”に具体的な記述がみられる。日本語版ハイライトもある。
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