2012年05月18日
サマリー
3月決算会社の定時株主総会が6月下旬のある一日に集中することは、よく知られているが、それがどのように決まるのかは、あまりよく理解されていない。大まかに下旬の金曜日か木曜日と思われているのだが、実は一定の明確な実務慣行によって決まっているのであり、カレンダーさえあれば、ある年の株主総会集中日が何日であるかは、簡単にわかる。この慣行は、3月決算会社の場合であれば、
・6月最終営業日の前営業日
・当該日が月曜日である場合には、その前週の金曜日
というものである。
3月決算会社が6月中に定時株主総会を開催しなければならないというわけではないが、通常は定款で「第○条 当会社の定時株主総会の議決権の基準日は毎年3月31日とする」というように、株主総会の権利行使基準日を事業年度末日、つまり決算日と同一日に定めている。この基準日の有効期限が3ヶ月以内とされているため、3月末日決算であれば6月中の総会開催が必須となる。定時株主総会に関する基準日を決算日以外に定めることも可能ではあろうが、実務では採用されておらず、6月下旬に集中的に開催される状況は、変わっていない。
最終の営業日の一日前というのは、総会が紛糾し翌日に繰り越した場合には、3ヶ月以内に終了できなくなると考えられるからだ。もめたとしても6月中に終えるために一日の余裕を置いておくわけだ。また、月曜日を避けるのは、郵便で送られてくる議決権行使書面の集計が開会に間に合わなくなるかもしれないからだ。休日にたまった分を処理するのに、時間を要する恐れがある。ただ、いずれも法律上の要請ではないので、稀にではあるが最終営業日に開催する事例もあるし、月曜日に開催することも時折見られる。
今年は最終営業日が29日であり、その一日前の営業日が28日の木曜日なので、この日におよそ4割の会社が総会を開催する。もっとも、近年は集中開催に対する批判も強く、集中日を避けて定時株主総会を設定する会社が増えている。今年は26日(火)と27日(水)に開催する会社も相当あるし、22日(金)も多い。かつては、9割以上の会社が同一日に開催していたことを思えば、株主総会開催日の分散化は大幅に進んでいるといえるだろう。
今年の株主総会開催日の分布状況については、ガバナンス「進展する株主総会の分散開催」(2012年5月16日)をご参照下さい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
東証が求めるIR体制の整備に必要な視点
財務情報とサステナビリティ情報を統合的に伝える体制の整備を
2025年04月28日
-
サステナビリティ課題への関心の低下で懸念されるシステムレベルリスク
サステナビリティ課題と金融、経済の相互関係
2025年04月21日
-
削減貢献量は低炭素ソリューションの優位性を訴求するための有用な指標となるか
注目されるWBCSDのガイダンスを踏まえて
2025年04月17日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日